風景写真を撮るといっても自然界には様々な対象がある。特に島国である日本では、海、山、川とバラエティに富んだ景色に恵まれている。野村さんは、このところ、自宅から大体2㎞圏内の徒歩か自転車で行けるところにほぼ毎日のように出かけているという。そうなるとやはり目と鼻の先の多摩川が主な対象となるのは自然の成り行きであろう。
毎朝夜明け前に出かけて行き、多摩川にレンズを向け続けている。中野島側からよりも調布側から撮るほうが、光の加減でいいものが撮れると野村さんは言う。この言葉からも、写真にはやはり光が重要な要素であることがわかる。また、晴れわたった天気の良い日よりもむしろ雲が出ているときの方が面白い写真が期待できると言うのもいかにもプロらしい一言ではある。
この日、朝7時過ぎころ、空には黒っぽい雲が広がっていた。何か面白いものが撮れないかといつものように空に向かってカメラを構える。すると次第に雲が切れ始め、やがて雲間から太陽の光が次々と差してきた。これはチャンスとばかりに息をのんでシャッターを切る。所謂「天使の階段」に遭遇して、一枚もうけたと思う。
雲間から光が差すこの気象現象は「薄明光線」という。一般的にはよく「天使の階段(Angel’s stairs, Angel’s stairway)」と言われる。また、別名で「ヤコブの梯子(Jacob’s Ladder)」「天使の梯子(Angel’s Ladder)」とも言われる。この名称は、旧約聖書創世記28章12節に由来している。 記述では、ヤコブが夢の中で、雲の切れ間から差す光のような梯子が天から地上に伸び、そこを天使が上り下りしている光景を見たとされている。これがキリスト教徒の間で知れ渡り、やがて自然現象もそのように呼ばれるようになった。
また、この現象は「レンブラント光線」とも言われることがある。画家のレンブラントがこれを好んで描いたことに由来する。その結果、絵画表現上においては、コントラストが強くなり、光の当たる部分と闇の部分との対比が強調され、宗教的な神々しさを表現することに成功したと言われている。
この写真は、確かに偶然撮れた一枚ではあろうが、ただの偶然ではない。日頃から「雲があると何か面白いものが撮れる」と意識していること、そしてその雲に向かって何度も繰り返しレンズを向け続けていることでチャンスが与えられるのだ。これがプロ意識というものであろうか。ますます、野村成次というカメラマンに魅せられていく。
野村成次写真展)
~つづく~
(八咫烏)

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