一目見てそれと分かる写真もあれば、説明を聞いて初めてその写真の意味が分かるというものもある。この写真は、既に撤去済みで今はもうない、かつて多摩川に渡されていた送電線にカワウが止まっている写真である。この「プロカメラマンの秘密を探る」シリーズの第5回「集合の美」で紹介したものだ。
さて、次にもう一枚の写真を見ていただきたい。同じように送電線にカワウが止まっている写真だが、ご覧のように背景が全く違う。前回は、青空が背景だったのに対して今回はまん丸い夕日になっている。同じカワウの群れの写真なのに180度印象の違う写真になっている。
今回この写真を取り上げた理由は、プロのカメラマンというものは、狙った一枚を手に入れてひとつの目的を達成しただけでは終わらない人種だということだ。2枚とも野村さんの手によるものだが、彼は、1枚目の写真を撮った時に、はたして2枚目を撮ることを想定していたのだろうか。
全くの想像だが、私はこう思う。最初の一枚を撮る前までは2枚目のことは頭になかったのではないか。1枚目は偶然ものにしたものかもしれないが、「よし、いいものが撮れた!」と自分で納得した瞬間に、「次は夕日をバックにでも撮ればもう一枚面白い写真が撮れそうだ!」と漠然と思ったに違いない。
そして、その日は別の風景を何枚か撮って帰り、日を改めて、今度は夕日を意識して現場に向かったような気がする。天気のこともあるので翌日かどうかはわからないが、おそらくあまり日を置かずに再び現場に行っただろう。しかも今度は最初から「夕日をバックにしてカワウの群れを撮る」というはっきりとした目的を持って。
自分自身に立ち返って考えてみる。自分のした仕事に納得できたときは、次もいい仕事をしようとは思う。しかし、もし、私がこの写真を撮影していたとしたら最初の1枚に大満足して、”背景を変えて” もう一枚という発想はでてこない。こうしてプロカメラマンは次々と良い作品を生み出していく。このあたりがプロの神髄なのかもしれない。
(八咫烏)
~つづく(かな?)~

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