「そうめん!」
ちょうど遊びにきたなっちゃん(次女)が元気よく叫ぶ。
なっちゃんは、結婚して1年。共働きの疲れが出てきて、実家ではちょっと甘えモード。
我が家はそうめんが好きだ。なぜかひやむぎは食べない。
理科系夫が手早くそうめんを茹でる。ネギとシソを刻むのはなっちゃん。
あつこはささっと枝豆を茹でる。小玉スイカを切る。
いつも2人だけのお昼ご飯が、急に活気づく。
なっちゃん「ねぇ、ひやむぎとそうめんって、どこが違うの?」
あつこ「さあ?」
Google先生に聞いてみる。便利な世の中になったものだ。
あつこ「そうめんの太さって、1.3ミリ以下なんだ。日本農林規格で決まっているんだね。」
なっちゃん(食べているそうめんを見つめながら)「これ何ミリなのかなぁ、こんなに細くちゃ測れないよね」
母子で話していると、ずっと黙って食べていた理科系夫が立ち上がった。
何やら持ってくる。
あつこ、なっちゃん「なにこれ?」(声が揃う)
理科系夫「ノギス」
あつこ「え?」
なっちゃん「パパ、まさかこれで」
あつこ「なに、ノギスって」
なっちゃん「そうめん測るの?」
あつこ「こんなの持ってたの」
なっちゃん「初めて見た!」
あつこ「ノギスって変な名前」
理科系オット、女性陣を無視して黙々と動き出す。
理科系夫「うーん、うまくいかないからそうめん持って」
なっちゃん「こう?」
理科系夫「間を通して」
なっちゃん「柔らかくてうまく行かない」
目盛りをどう読むのかわからない。
理科系夫「1.0ミリ」
なっちゃん「なんで?」
理科系夫はなっちゃんに読み方をていねいに説明している。
なっちゃんはうなずいているが、あつこはよくわからず。
昔から、オットはこうやって子供に事細かにものごとを説明していた。
久しぶりに、思い出した。
なっちゃん「と言うことは、乾麺だったらもっと細いんだよね。」
理科系夫「調べてみよう」
あつこ「(うわぁ)」
なっちゃん「これは、0.4ミリ?」
理科系夫「そうだね。0.4ミリだね」
あつこ「(なんで?)」
理科系夫「我が家で食べているそうめんは細い方だ。
ゆでると2倍程度にふくらむ。
それがわかったね」
なっちゃん「さすが三輪そうめん」
あつこ出る幕なし。
あつこ「あ、だけど、どうしてこのはかるものは変な名前なの?
ええと、ギス?ガス」
理科系夫「ノギス」
あつこ「そんな変な名前覚えられない」
理科系夫「ノギスの墓、とか」
なっちゃん「えっ」
理科系夫「ホトトギスの、いとこの子供の名前はノギス」
あつこ「うわ」
理科系夫「性格悪くて雰囲気悪くするから、ノギスギス」
なっちゃん「……」(黙ってそうめんを食べている)
あつこ「……」(同じく食べる)
理科系夫「あれ?ノギス、中学校の技術家庭の時間に使わなかった?」(話題変更)
ーーー沈黙の世界ーーー
とうとう、なっちゃんがこらえきれず、笑い出した。
なっちゃん「なんでパパ、そんなもの持っているの?」
理科系夫「普通持ってるでしょ」
あつこ、なっちゃん「持ってない!」
皆さんのお宅に、ノギス、ありますか?
机の中に入っていてすぐに出てきますか?