84歳の挑戦★大菩薩峠登山を目指す・・・X氏のつぶやき116

最近、体力を落としたのか気力も弱くなり、朝の多摩川の散歩にもややもすると出かけなくなった。
あんなに朝日の昇る多摩川の朝が大好きだったのに行かなくなった。それは毎週月水金の透析の終わった後、体力が弱くなり体調調整がうまくいかないのが原因だった。

その様子に友人が気づいて、「山にでも気分転換で歩きに来ませんか」
声をかけてくれた。かつて「大菩薩峠に行ってみたいなぁ」と私が話したことがあったので、友人に大菩薩峠が出てきた。
「無理なら途中でやめて帰ったらいいのだからゆっくりゆっくり登ってみませんか。比較的緩やかな道だから、一歩一歩休みながら登れば行けるかも」と弱気になっていた私を勇気づけてくれた。
「高尾山の一丁平のあの階段を登ったんだから、ゆっくりなら登れる。階段はないのだからまず福ちゃん荘の山小屋まで目指せばいいですよ」

そんな話をもらって計画は2日後の土曜日9月3日にと決まった 私は迷ったが・・・。
友人がリーダーでエスコート役の二人の女性も参加してくれた。 この3名は何度も行っているところでした。

そのことを透析の主治医と看護師さんに話すと、心臓のチェック、両足の動脈のチェック、骨密度のチェック。正常である。
「無理をせずに行ってきなさい。友人の指示に従って。報告をして くださいね」
過去に何度も友人との山登りの報告をしていたので、ペースメーカーを装着している私には決して無理をしない挑戦の意欲を大事にしてくれた。

私は自信がなく途中でリタイアする勇気を持って参加しようと考えた。
この大菩薩峠行きは私のために計画してくれたありがたい友情の企画であった。

9月3日土曜日4時起床。5時駐車場に集合。出発。中央道を走り勝沼のインターで降りてバスの通る狭い山道を走って駐車場ロッジ長兵衛に着いたのは7時53分。駐車場はほぼ満車だった。
山の靴に履き替えて、服装も山のものにして、用具を確認して出発。

山道に入ると霧がかかってもやっている。いつ雨が降るか分からない。 気温は20度ぐらいで登りやすかった。
だが私にはすぐに試練が来た。だらだらと緩やかな道といえども私にとってはすぐに息切れになる。
足の筋肉が張ってくる。10m行けば水をひとくち口に含んでまた歩く。 初めの目標は30分くらい歩いて到着する福ちゃん荘だ。
私の歩く気力は?体力は?心臓は?と友人は気をつけながら後からついてきた。 「行けそうだ大丈夫だ」とつぶやきながら私をむち打って歩かせた。無理せずに、歩いてとは言わなかった。 足が動かなくなるのなら大丈夫。心臓さえ大丈夫なら。ここは先を見て考えると思ったようだ。
 一方 私は10歩20歩歩くととまって水を一口飲ませてもらう。

普通の人は25分で行かれるところを私は45分かけて到着した。
「すごいよく歩けたわね」
「 心臓は大丈夫やな。これならゆっくり頂上を目指せる。これからはダラダラ道が続く。頂上の手前に少しきつい道があるだけだから」と、だまされて歩いたようだ。
私は久しぶりのため、弱めている右足より左足の太ももが張ってきた。 左側によたる歩き方になった。 友人は「心臓が大丈夫のようだ。とめずに歩かそう」と考えたようだ。

「頂上まであと何m?200mか?何分かかる?」

私のスピードで登るなら彼女達にはルンルンの登山である。
私には 景色なんかクソ食らえだ。残された道のりがどんな上り坂なのか?
それに自分は耐えられるのか。もう左足はフラフラになっている。踏ん張りが効かなくなっている。誰か引っ張ってくれないかなぁ、と心の中で叫んでいるのだ。

下ってくる人の中には家族5人、ご主人が子供を背負って降りてくる。3人の小さな子供を連れて頂上から降りてくるのだ。だとすると反対側から頂上に登ってきて今降りているのだ。 私はショックだったが力をもらって残り200ⅿを歯を食いしばった。ルンルン女性たちは頂上に向かった。 友人も大丈夫と思って頂上に向かった。3人が私が頂上に到達するのを待っていてくれた。

ふらつきながら頂上に立った。84歳の登山家になるのか。
とにかく倒れることなく到着したのだ。 奇跡が起きた。

ここが大菩薩峠の頂上だ!!
「介山荘頂上まで1時間55分。ただいま10時55分です よく頑張りました。もっと時間がかかるかと思った」リーダーは言った。
「さぁ紅茶を沸かして飲みましょう」と準備を始めると、霧の中大粒の雨が落ちてきた。 紅茶を飲んでいる場合ではなくなくなり茶店に入った。客はそんなにいなかったので助かった。

頂上から上を見ると ガスっている中目の前を登っている人がいる。あれはどこに行くのか? 賽の河原だ。「では3人は行ってきたら。 私はゆっくり体力を取り戻すから」
3人は小雨になったので賽の河原に向かった。15分ぐらいで登るそうだ。 40分待った。彼らはガスの中で 手を上げながら戻ってきた。
これで思い残すことはないだろうと私は思った。 私とは別の行程で満足しただろう。

頂上介山荘12時55分に下山を始める。 下り坂、下り道は楽に歩けるがうっかりすると危険がまつわりつく。友人が特に気をつけてくれた。うっかりすると下りの足は速くなる。それが危険なのだ。なんとか休むことなく福ちゃん荘に着いたのは2時15分。
私は早くなっていた。ロッジ長兵衛に着いたのは2時59分。 駐車場に着いた。

往復7時間15分の登山は、 私には驚くほどの上出来だった。皆が喜んだ。
それは他人の力を借りて自分の力を引き出した私だった。 そこから帰りだ。ご褒美に天目山温泉に連れて行ってもらった。

夕食を食べてハイムにたどり着いたのは夜9時は回っていた。あえて84歳の山登りをやっているのではない。近くの生田緑地を歩くのでいいのだが、アルプスが見えるところに、富士山が美しく見えるところへ連れて行く。 みんなの期待は膨らむが、自分の体力を自らで知ることのためには山登りが一番だと思って始めた。

私がこの体で大菩薩峠に登れるのはこの友人達の励ましが挑戦の心を湧き出してくれるからだ。 ペースメーカー装着、 透析治療を受けている老人に友人が再び青春の花を咲かせてくれた。このことが再び多摩川の朝を散歩する習慣に繋がっていくのだろう。 老人の生活に勇気を与えてくれる友情。与えられるだけでなく、自分もお返しのできる老人になりたく、今日も多摩川の堤に出てみるのだ。
たぬきの話が密かに秋を伝えてくれた。

9月4日私の大菩薩峠に再度登れることを念じた翌日でした。

ハイムの皆さん、自分の力は衰えても、他人の力に助けられて不可能と思われた夢が叶えることもあります。

日々感謝です。

84歳の挑戦★大菩薩峠登山を目指す・・・X氏のつぶやき116” に対して4件のコメントがあります。

  1. アバター ヤタガラス より:

    素晴らしい投稿を大きな感動を持って読ませていただきました。
    ご本人の病いに屈しない果敢な挑戦意欲と友情の素晴らしさを実感することができました。
    わが身にも起きつつある高齢化による体調の変化に忸怩たる思いをしている時に、おかげさまで大いに励まされました。
    ありがとうございます。

  2. アバター Xマン より:

    ヤタガラスさんへ
    刺激になられたなら嬉しいです。
    このようなコメントをいただくと私も勇気が湧いて来ます。
    日々が一生懸命の生活ですのでヤタガラスさんのお言葉は励みになります。
    どうかお元気な一日でありますようお祈りしています。

  3. アバター ルンルン女性T より:

    X氏の大地を踏み込む足音、胸の鼓動が風にのり、私達に伝わってきます・・・
    この強さ、強靱な精神力はX氏の人生そのものなのか・・・
    いくつかのシミュレーションを頭に入れての登山でしたが大菩薩峠の頂上に辿り着きました。
    本当に凄い、同行した3人は感動で胸が震えましたよ・・・
    そして、X氏の姿をみて私の「北アルプスの頂上に立つ夢が、挑戦する大きな目標に変わりました。」
    ありがとう・・・♫
    勇気をもらったのは私の方ですね。

  4. アバター Xマン より:

    その節は有難うございました。
    何も考えず一歩一歩前に前にあの霧の中、道をたぐり寄せるがごとく、とまりそうな足を皆さんの応援の声に支えられて未踏の道をたぐりよせました。
    もうすぐよ!の声にも足はとまりそうになり、休み休みもうすぐよ を1時間半をかけて頂上へ辿り着くとそこまで待っていてくれたように大粒の雨がふりだしました。
    その雨は私にとって恵の雨でした。
    次も懲りないでエスコートをお願いしますね。
    足音が山の香りや風になるように歩けたらと挑戦の気持ちが沸いてきました。

    ありがたき友へ

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