ぼくの年賀状 /竹馬の友へ  おい!てっちゃん元気かい?・・・X氏のつぶやき㊶

お前とおれは、昭和20年からのガキ友だ。いつも腹をすかせていたが、井戸水を飲んで満腹。学校帰りには君の家に立ち寄った。
君の家の裏には、大きなあんずの木があった。あんなにうまい果物は初めて食べた。君のおばあさんが言った。
「ひとつは、鳥のために残しておけよ」と。いちじくの木や柿の木もあった。
君の家はごちそうの果物畑だった。

いたずらもやったな。
やなぎの2又の枝を切ってきてパチンコを作り、家屋にとまっているスズメめがけて射ったな。スズメは当たるもんか!と飛び上がり笑われたな。そんな2人だが、いつしか東京に出て大学を目指そうと野望を抱いたな。

たんぼでトノサマガエルが笑った。

だが勇気が、何かしたい!という気分が勝って、生き馬の目をぬくと言われていた東京にとうとう出てきた。
田舎っぺが人ゴミにまみれて、踏まれながら「だからサ、」というようになった。
おれは幸い合格、お前は予備校に通いながら働いた。親元はあてにせず、自分の力で!ガキ友は決心していた。
君は新宿西口の喫茶店ウエストでバーテンダーで働いた。なんでお前にそんなことができるんだ!とおれは君のすごさを感じた。
蝶ネクタイをしめて、カウンターの向こうでコーヒーを淹れている姿に、もう田舎っぺは消えていた。
「だからサ、俺のおごりだ、コーヒー飲んでいけ」それからだ。ウエストの近くにあった天丼屋、鶴亀食堂に天丼を(30円)食べにいったとき、天丼のおじさんがおれたちの食べている天丼におつゆを足してくれたことを覚えているか?「満腹になれよ」とおじさん。あんなごちそうはなかったな。

それから君の下宿先まで帰るのにバス代が往復25円、片道15円の関東バス。
バスに乗るか?歩きか?歩けば30分。当然歩いた。バス代分で、コロッケをはさんだコッペパンを買った。
翌日の休みの日、おれは君の下宿を訪ねた。
腹ペコだ、何か食べるもんないか?
お米はあるが、おかずはないよ。
米を炊いた。出来上がったホカホカのご飯に、君の母が送ってくれたらっきょうの漬汁だけがあった。それをかけて2人は満腹になったな。感謝したよ。

おまえもついに大学に入った!
2人で学生服を着て、田舎の親に見せに帰ったな。ガキ友2人が。
自分の力で、東京のネオンの空に夢を叶えたな。

それからいろいろあったが、今は81歳。
おまえはどうしている?元気かい?

竹馬の友より

令和2年元旦

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