海にもちょうちょう魚(うお)がいるんだよ・・・X氏のつぶやき70

私は、釣りキチですが、コロナ感染注意で船釣りも自粛しています。ある日、蝶々博士が「私は釣りをしたことがないのよ」と興味を示してくれたが、私の体調も良くなく、用心をしながら遂に「キス釣り」に行くことにした。

蝶々博士はまず船酔いさせては一度で船釣りが嫌になる。それはまずい!行く以上は面白い!と言ってもらわないと、私の釣りキチ精神に反してしまう。「蝶々は海にもいるんですよ」博士の心をひきつけて、いよいよ「キスの船釣り」を決めた。自前に釣竿の扱い、船上から竿を出して、海底の砂地にいるキスをさそって釣る釣り方をレクチャーして、夢を膨らませた。

天気予報は、台風9号、10号と続いて日本に近づいている。嫌な天気だな!せっかく行くと決めたのに。私は天気図をみて台風が本土に上陸することはない、横浜の海に風が吹いてくるのは2、3日後ではないか、と船頭さんに電話をして「大丈夫だ」と確信した。土曜日朝6時に出発、7時に港に着いた。
「釣り客、たくさん来ていますね」
「早く来る人は、船の中の釣り席を取りたいので、1時間前に来てるんですよ」

蝶々博士は港に来るのも初めて。釣竿、仕掛けの準備をして、船が港を出るのを待った。晴天の報いだった。釣り船は20名の客を乗せて港を出た。
「潮風が心地いいですね」
「ガスってなければ富士山が見えるんです」
「海から陸を見るのも初めて。美しいですね。」

船は30分程沖に向かった。山波をけって走った。キスが住む砂地のところまで走った。「さ、やって、水深は15メートルです」と船長の声。

蝶々博士は、私の指導のもと、釣竿の仕掛け糸を海底に落とした。
「落ちていく糸がたるんだら、重りが底に着いたので、竿を立てて少し引いてキスを誘ってください」
蝶々博士は海底15メートルが分からない、着いているのかいないのか。私は早速キスを釣りあげた。が蝶々博士を焦らせたらいけない。あわてず底を取ってください。ゆっくり持ち上げて、ゆっくりおろしてください。砂地にもぐっているキスがエサを見つけたら飛びついてきます。すぐあわせないで、二度目にひいたらあわせてリールを巻いてください。

「何かあたったかな?」
蝶々博士の竿先がぴょこぴょこ動く。きている、持ち上げて!
蝶々博士は生まれて初めてキスをつり上げた。が、引きはわからなかった。波の動きが、魚のあたりか分からないままキスを釣りあげた。

「その調子!いいですよ!」

糸がもつれる、竿に糸が絡んで、海底に仕掛けが落ちていかない。エサの付け方もぬるぬるで苦労している。しかし熱心だ。
「十五メートルの底が分かりません!」
大抵のことはわかっても、船上から釣り糸垂らして海底に重りを落とし、キスの居場所をさぐるのがこんなに難しいのか!海流は動いている、うっかりすると隣の方とおまつりになる。でも熱心に釣り続けて、キスを何匹も釣ることができた。そんな中で強い引きがあって博士が釣りあげたのは、海の蝶々“ほうぼう”という美しい魚だった。

「おぉ!これはなに?」
「海の蝶々ですよ!」
「美しい!」
「やりましたね!」
「これは引くのが分かりました!面白いですね。」

やっと博士は笑顔を見せた!私の心もやっと落ち着いた。船酔いもなく、キスも釣れ、その上「海の蝶々」を博士の釣り針にかかってくれたのです。私が釣ったのでは何も楽しくありません。
暑い船上も、熱中症予防で時折船室に入って暑さ対策をとり、台風が来るぞ!という予報の中、ひとときのキス釣りを楽しんだ。蝶々博士はこれで海も好きになってくれるだろうと私は願って、港に後にした。

「おもしろかったです!海に帰ったほうぼう、元気に生きていきますかね」
と蝶々博士は生き物への優しさを見せてくれました。私にまた一人、釣り仲間ができました。ありがとう!

編集部より: この記事は「ハイム蝶百科図鑑」にも掲載しています

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