ヒマラヤの秋に咲く桜(ハイム花の図鑑より)

大学を卒業して海外に渡り、そのままずっと外国暮らしを続けている友達がいます。彼が秋にネパールを訪れたとき、満開の桜に迎えられ、桜は日本ではなく、ヒマラヤが原産、秋に咲く花なのだと知って驚いたそうです。

私がこの話を聞いたのは桜だよりの企画が終わったころ。秋になったらホームページに書こうと思っていたのですが、『花の図鑑』にとっくに先を越されていました。

ヒマラヤの麓ネパールは海抜2000m程度の高地ながら、緯度は奄美大島と同じくらい、バナナが収穫できるほどで、温帯と言うより亜熱帯に近い気候です。そこに育つヒマラヤサクラは、秋に開花し、冬になっても、長く咲き続けるのだそうです。(←写真の上をクリックしていただくと大きくなります)

そして、そのヒマラヤサクラは、何百万年という気の遠くなるほど長い時間をかけて(人間の歴史は20万年)ブータン、ミャンマー、中国四川省、韓国を経て、大陸と地続きだった日本へと移動してきたといわれます。

この過程でサクラは、冬の寒さに耐えて花を咲かせる術を獲得しました。厳しい冬には葉を落として冬眠、暖かい春を迎えると目を覚まし、蕾がふくらみ、花開くのです。
これは原産地ヒマラヤでも同じ、山奥の寒さが厳しいところでは、春にサクラが咲くそうです。

日本の野生種は沖縄のカンヒザクラを入れて11種。それらが自然交雑して生まれたヤマザクラは100種、人の手で新たに生み出された園芸種は300種以上といわれます。

中でもソメイヨシノは、江戸末期に駒込の植木職人がエドヒガンとオオシマザクラを接ぎ木して生み出した園芸種、明治に入って全国各地で盛んに植えられるようになり、今では日本のサクラの80%を占めるとか。
接ぎ木か挿木で増やされたクローンですから、同じ気象条件のところでは一斉に咲き、一斉に散るのです。

サクラは北半球の温帯地域に見られますが、海外ではサクランボを収穫する果樹という側面が強く、日本のように花を愛でるという習慣はなかったようです。

日本が贈ったサクラが増えて美しく咲き誇る名所としては、ワシントンDC・ポトマック河畔が有名ですが、ほかにも、スウェーデン、ドイツ、台湾などにも名所があります。ソメイヨシノだけでなく、ヤエザクラや、カンザンと言った華やかな種類が好まれるのだとか。
イギリスからは熱心な蒐集家が3度も来日し、今の日本に失われてしまった種類のサクラが保存されているそうです。

福岡の名所で撮った満開のサクラの写真を送ってくれた幼なじみは、「このまま温暖化が進めば、冬眠しなくなるから、ソメイヨシノは咲かなくなるよ」と言います。
サクラの長い長い歴史を考えれば、ソメイヨシノはほんの点、そういうことがあるかもしれないと思います。

ソメイヨシノ以外のサクラが見られる場所を表にしてみました。近くは下布田小学校に、夏を除いてずっとサクラを見られるよう、幾種類も植えられているそうです。

原木:静岡県立熱海高校
若木:市内各所
ネパール国王から贈られたヒマラヤザクラ
大阪造幣局 134種   350本
広島造幣局 60種
新宿御苑 65種   1300本
上野公園 40種
多摩森林科学園
サクラ保存林
250種
茨城県結城市
日本花の会桜蔵見本園
350種  (国内外のサクラ)
島根大学
本庄総合農場
160種

 

C.R

 

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