βクリプトキサンチンで肺がん・糖尿病予防

テレビで「β-クリプトキサンチン(β-cryptoxanthin)」という耳慣れない言葉を聞きました。私たちの健康維持に効果のある働きが最近注目を浴びているらしいので少し調べてみました。

カロテノイド
β-クリプトキサンチン(β-cryptoxanthin)は、天然に存在するカロテノイド色素の一つ。ヒトでは、β-クリプトキサンチンはビタミンA(レチノール)に変換されるためプロビタミンAと見なされている。他のカロテノイドと同様に、β-クリプトキサンチンは抗酸化物質としてフリーラジカルによる酸化的損傷から細胞およびDNAを保護していると考えられている。(Wikipedia)

生活習慣病の予防効果の一つにカロテノイドが大きく関わっているのではないかと考えられています。多くの研究者がカロテノイドに着目し、どのカロテノイドが最も関連があるのかを解析・研究しています。これまでの疫学研究によると、興味深いことに、カロテノイド類の中で、β-クリプトキサンチンのみが肺癌リスクや糖尿病リスクを低下させると報告されており、その他のカロテノイド類は逆に肺がんリスクを高めると報告されています。

β-クリプトキサンチンには不思議なことがあります。日本人には血中β-クリプトキサンチンレベルの高い人が多いこと、 日本の妊婦さんの母乳中のβ-クリプトキサンチンは世界各国と比較して圧倒的に高濃度なことです 。その理由の一つは温州みかんにあります。

温州みかん
「温州みかんといえば、β-クリプトキサンチン、β-クリプトキサンチンといえば温州みかん」といってよいほど両者は切っても切れない関係にあります。β-クリプトキサンチンを十分含んでおり、しかも日頃日本人が手にすることの多い食品といえば、温州みかんが最右翼です。ほかにはカキ、ビワ、赤ピーマン、パパイヤなどが高含有ですが、温州みかんほどポピュラーな食品ではありません。

ところで様々な生理機能が期待できるβ-クリプトキサンチンですが、せっかく摂取しても喫煙と飲酒の両方の習慣を有する人では著しく血中濃度が低くなっているという研究結果が最近報告されました 。みかん産地住民を対象にした調査で、β-クリプトキサンチンの摂取量と血中濃度から、飲酒と喫煙習慣がβ-クリプトキサンチンの血中濃度とどのような関連があるかを横断的に解析されました。

その結果、非喫煙者においては、軽度の飲酒量ではβ-クリプトキサンチンの血中濃度はほとんど変わりませんが、毎日25g以上のアルコールを摂取しているアルコール常用者では、β-クリプトキサンチンの血中濃度が有意に低いことが解りました。一方、喫煙者においては、飲酒しない人達での血中濃度は非喫煙者と有意な差は認められませんでしたが、飲酒量が比較的少量でもβ-クリプトキサンチンの血中濃度は有意に低く、飲酒量が多い人では更に顕著に低いことが解りました。

飲酒も喫煙もしない人達に比べて、喫煙習慣を有するアルコール常用者では、β-クリプトキサンチンの血中濃度は約53%低い計算になりました。喫煙と飲酒の両方があることで酸化ストレスが相乗的に増大するため、これらの酸化ストレスを消去するためにβ-クリプトキサンチンが消費されているのではないかと考えられます。同様の傾向はβ-カロテンとα-カロテンにも観察されましたが、最も影響を受け易いのはβ-クリプトキサンチンでした。せっかく摂取したβ-クリプトキサンチンを有効に役立てるためにも、お酒を控えて禁煙することが賢明のようです。

β-クリプトキサンチンの含有量(食品成分データベース, 2017年[10])
名称 含有量(μg/100g)
パプリカ(粉) 2100
温州みかん(普通、生) 1600-1700
温州みかん(濃縮還元ジュース) 1100
ぽんかん(生) 1000
あまのり(焼き海苔) 980
パパイア(生) 820
柿(甘柿、生) 500
いよかん(生) 270
とうもろこし(ポップコーン) 170
オレンジ(バレンシア、米国産) 130
なつみかん(生) 130
カボチャ(茹で) 90
とうもろこし(コーンフレーク) 80

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