笑説ハイムのひろば13 恐怖のバ-ジョンアップ②

恐怖のバージョンアップ

翌日、山咲と池田の両方から西野にこの出来事の報告メールが入った。西野には、既にその裏事情が分かっていたので、慌てなかった。「全く問題のないことなので安心してください。近々詳しく説明します」と答えた。

ところで、この「歩こう会」のサイトについて少し説明しておかねばならない。前述したように、こう会のサイトの原型は西野が作ったもので、「これはたたき台なので、あとはバナーもメニュー項目の設定も自分たちで自由に考えて作ってください」と手渡したものだ。2、3か月後にその出来上がりを見た時、西野は感心した。デザインも色使いもスッキリとした素晴らしいものに仕上がっていた。

当初、つくり隊のメンバーから習い始めた頃、北川と山咲の二人とも手元が覚束ない感じがあったが、今やすっかり慣れて写真や記事の扱いもお手の物といった感じに上達している。それに、色彩の選択などについてもセンスがあり、全体のバランスも非常によくとれた立派なものに仕上がっている。それに元々ホームページ作りの経験がある家永らのサポートもありメンバー間の信頼とチーム力が現れていると、西野は感じた。

アップされた計画表を見ると、ベテランメンバーにより、目的地の選定から始まり当日の行程が非常に細かく設定されており感心するばかりである。西野が特に感心したのは、始めから二つのコースが用意されており、体力によって途中で帰宅できる楽なコースと元気な者用の全行程コースがあることだ。全メンバーへの配慮が見られ、この会の人気が高いのがよくわかる。

歩こう会から今回の騒動の連絡を受けて、西野は、関係者に集合してもらって説明する必要があると思っていた。そうしないと、今回たまたま被害者となってしまった山咲淑子と同じ目に合う者が再び出る可能性があった。今回の、異常と思えた事態は、実際には異常ではなく「WordPressのバージョンアップ」が自動的に行われたものだった。自動ではなく、自分の手でバージョンアップしたのであればそれほど驚くこともなかったかもしれない。

ただ、そのバージョンアップも日常何度も行われている「マイナーチェンジ」であればさほどでもなかったはずが、今回は、V4.9.9からV5.0.0に移るメジャーチェンジだった。内容としては、これまで使用していたEditor(投稿ツールプラグイン)の大幅変更だった。WordPressの中でも最も多く使用される記事投稿画面と固定ページ画面が新しいものに切り替えられた。これにより、今まで目にしていた投稿画面が全く違うものになった。

「プラグイン(Plugin)」とは、CMS(Contents Management System)に様々な機能を付け加える拡張機能ソフトのことを言う。今回の例でいうと、「CMS」がWordPressであり、「Editor」が「Gutenberg」という名のプラグインである。ところが、この「Gutenberg」の画面は、従来のEditorとは全く違った画面なのでユーザーが困らないように、元のEditorも同時に使えるようにしてある。つまりどちらか選択して利用できる。逆に言うとそれほど大きな違いがあるからメジャー・バージョンアップになったのだ。

後日、西野は、各姉妹サイトの代表を始め管理者、編集者に集まってもらって、今回の騒動の経緯を説明し、万が一山咲と同じような目に合っても慌てないようにと伝えた。幸い同じことは起こらず、WordPressの4から5へのバージョンアップ問題は一件落着となった。

~つづく~
 

蓬城 新

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

Optionally add an image (JPEG only)

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください