ボクのロンドン滞在記~シン日英同盟めざして~ (その35) 週末を友人宅で過ごす

(前回まで)7月15日の午前2時過ぎに、突然、何者かが部屋に入ってきた。夢の中の出来事だと思ったが。夢うつつで訳が分からない筆者だった。やがてそれが家主のお爺さんだと気づく。結局、後になって不動産屋の説明では、配管に緊急な事態が発生したためだったとのことだった。実際、朝になるとお湯が出なくなっていた・・・・・・
 
7月15日(金)快晴
オフィスを定刻に出て、いったん帰宅後駅に向かう
夜半に騒動があって、夜が明けた朝、洗面所とバスのお湯が出なくっていました。朝シャンをすることもなく(ふだんからしていないが)、そのまま大学に出勤しました。
お昼時には、同僚のエルちゃんに、幽霊が出たよなどとすこし話を盛っておどろかせたりしました。
定刻にオフィスを出て、部屋に戻り、旅行用の服装に着替え、ハイキングシューズを履いて、準備してあったリュックを担ぎ、部屋を出ました。

地下に住んでいる大家にあいさつします。いやみの1つも言ってやろうかと思ったのでしたが、善良そうなお爺さんの顔を見ると、そうそう悪態をつくことなどできなくて、大家さんとこんな話を交わしました。

「今朝早く、ホントに驚いたけど、たいへんでしたね」

「いやあ、申し訳なかったね」

「まだお湯は出ないようですね」

「たしかに・・・。プラマー(配管工)が今日の午後に来たんだが、検査のみで帰っちまったんだ。月曜日に直すことになっているんだ。それまで、3階の空いているXX号室の浴室を使ってほしいんだよ。部屋の鍵を開けておくから」

「ニック(大家さんの名前)、ボクはこれから友人の家に泊まりに行って、あさっての日曜日の夜に帰ってくるつもりなんだ」

「そうかい。お湯が出なくって、そうしたのかね」
「いやいや、前から友人と約束していたんです。気にしなくっていいですよ。それじゃあ」
 
そう言い残して、気分は晴れやかに、足取りも軽やかに駅に向かいました。
 
駅に向かいながら考えました。

「案の定お湯のパイプは直っていなかった。今日修理工はきたが検査のみで終わったって。直すのは月曜になると言う。でも、これは月曜だって本当に直るかわからないぞ・・・。これがイギリスだ。」

 
ラッキーなことにこの週末は2泊の旅行を入れていました。
ユーストン駅で列車を待つ
最寄りの地下鉄駅から、Euston(ユーストン)駅に向かいました。この駅始発でボクが乗り込む予定の長距離列車が出ているのです。

すでに切符はネットで手配がしてありました。
 
ところがなかなかヒヤヒヤさせられます。

電光掲示板のまえに多くの人が待っています。次々に発車する電車が表示され、アナウンスがなされますが、ボクが乗る列車は、いっこうに表示が出ません。
アナウンスを聞いていると、乗務員の乗り込みが遅れているために出発が遅れていると言っています。

 
「なんと言うことだ。そんなことが許されるの?」

いらいらして待っている内に、急にアナウンスが入りました。

「おそらくこれだな」と身構えていると、出発する電車のプラットフォームの番号がアナウンスされました。

電光掲示板も変わります。
それと同時にいっせいに多くの人が大急ぎで改札に移動していきます。しかし、改札口ではなにもチェックがなく、そのまま皆がプラットホームに進んでいき、電車に乗り込んでいきます。
ボクも負けじと急ぎ足で進み、電車に乗り込みました。
指定席に座り、すぐに友人に電話します。(こちらでは電車内で電話してもマナー違反にはなりません)。
「ハーイ、テリー、申し訳ないのだけれど、電車の出発が遅れているんだ。おそらく30分くらい遅れそうだわ」

と伝えると、友人は、

「オーケー、駅で待っているので、心配しなくていいよ」と動じることもありませんでした。

(あとで分かりましたが、公共交通機関が遅れるのはむしろ当たり前、日常茶飯事のことで英国人には慣れっこのことでした。このトラブルにはロンドンに戻るときにも見舞われました。それはまた後日談として)。

まもなく、電車は30分遅れでゆっくりと動き始めました。

ようやく出発した電車の中で、到着が計算できて、安堵の気持ちをとりもどしました。

それにしても、こちらでは、耳で聞いて意味を捉えないと何が起こってるかわからない場合もあり(劇場でのボヤ騒ぎもありました)、トラブルに陥りかねないことが身に沁みてよくわかります。

こういうときに今ひとつ不安なときは、そばにいる英国人をつかまえて確認するようにします。なんといっても英国人は英語の聴き取りが得意ですからね。笑

さあ、気分を取り直し、列車は北に向かいます。
英国の友人宅で夕食そして宿泊
ロンドンを発って1時間半くらいで目的地に着きました。友人のテリーが駅で待っていてくれました。数年ぶりの再会です。
彼の自宅に向かう車の中で、矢継ぎ早の質問を受けて、こちらも大急ぎで答えていきます。
本当に親切で素敵な人たちとの交遊、交流に恵まれていることに感謝、感激です。

隣にお住まいのご夫婦も一緒に、庭の一角にしつらえられたパティオで食事と会話を楽しみました。外はまだ明るい(今の季節は、9時過ぎまでじゅうぶんに明るいのです)。

広大な牧場のような用地に家が建っています。パティオは友人の手造りだと言います。

さっそく食事をいただきます。ワインがおいしい。奥さんの手料理の鮭の照り焼きがこれまたおいしい。

食卓では、生来の好奇心も手伝って、こちらからずいぶんと不躾な質問もし、率直な本音を聞き出しました。

英国人がどんなことに興味を持ち、何を感じているかに関心があるのです。
おかげで、いろんな面で知ることができました。こういう体験は何ごとにも代えがたいものです。

食後は、火を囲んでコーヒーを飲みながら、こんどばボクが中心になって話を披露します。

話題は、もちろんフラットでの深夜の幽霊騒動です。すでに大学のオフィスでも同僚たちに同じ話を披露しているので、段取りも慣れたものです。どこで驚かせ、笑わせるかの計算もできています。

 
でも途中で友人からは、
「その幽霊、きっと家賃を払えって言ってきたんじゃないの」

と言われてしまいました。

友人たちは田舎での生活を本当にエンジョイしています。
きっとこれが英国人の理想なんだと思います。

おかげで僕にとってはおいしい食事とお酒と、友人たちとの会話を心から楽しんだ一夜でした。

会話が弾んで、英国に来てなんとなく英語が不自由なく出て来るようになっている気がします。

ありがたいことにペンションのような洒落た友人宅のゲストルームに泊まらせていただきます。

明日は朝が早い、5時に出発するという。シャワーを浴び、ベッドに入り、横になった途端に眠りに落ちていきました。
 
 
(つづく)

 

風戸 俊城

ハイム在住。現役時代は中東、東南アジアの4か国に駐在し、40年勤務した後、現在は英国と日本を結ぶ知財プロモーターとして働く。経済・産業分野の翻訳業も手がける。

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