へっぽこ野球部Ⅳ〜奇跡!?の勝利〜

勝てない。

もともと弱小中の弱小だったとはいえ自分達が最上級生になってからというもの公式戦だけでなく練習試合でも一度も勝てずにいた。一つ上の先輩達からは「お前らはうまいから良いとこまでいけるよ‼︎」と言われていたはずなのに…まぁその先輩の見る目がなかったと言われればそれまでなのだが。

このまま一度も試合に勝つことなく終わるのだろうか…そんなことを感じるようになったある日、急に練習試合が決まった。しかも相手は地区大会で優勝するぐらいの強豪校。

「え?なんでそんなチームと試合できるの?」と誰もが思っただろうが理由はシンプル。

顧問同士が友達!

そんなコネを利用して我がへっぽこ野球部は強豪校と練習試合をすることになったのだった。

試合当日、強豪校というだけあって野球のうまそうな奴らが一杯いた。心なしか体格も良い気がする。私は「これはいつも以上に一方的な試合になるだろうな…」なんてことを考えていた。しかし、ここでひょんな事が起きた。なんとうまそうに見えた選手達はほとんどが控えだったのだ。

「あれ!?あいつらレギュラーじゃないの?」

まぁほとんどの人は既に気がついていると思うが…そう!相手が控え選手を出していたのだ!!しかし単純な我々は、

「そうだよ!野球は体格だけ良いからうまいわけじゃないよな!!」

なんてポジティブに考えて試合に臨んだのだった。すると、

「あれ?強豪校っていうわりに全然大したこたないぞ!?打てる‼︎走れる‼︎守れる‼︎珍しく打線がつながる!‼︎」

なんとその試合前の予想に反して我がへっぽこ野球部が強豪校(の控え)を相手に猛攻をくわえ次々に得点を重ねていき序盤で5点も取ってしまったのだ。しかも相手の攻撃を1点に抑えて。

「も、もしかして俺たちって実は強かったんじゃない?」

裏事情に気がつかない純粋なボク達。

「勝てる!これは勝てるぞ!!」

そんな雰囲気がチームに漂い始めた時だった。相手ベンチにいるうまそうな選手達がウォーミングアップを始めたのだ。そして試合終盤。ついに相手のレギュラーたちが登場…ところが、調子に乗ったへっぽこ野球部の勢いは止まらなかった。

『豚もおだてりゃ木に登る』

なんと代わった相手のエースからも連打でさらに得点を重ねたのだ。その後、多少の反撃は受けたものの終わってみれば7-3。ついに我々は初勝利をあげたのだった。

強豪校を相手に勝利をおさめた我々は「俺たちは強い!!」「次の大会は優勝目指すぞ!!」なんて自信を通り越した勘違いをしてしまうわけですが、まぁ世の中そんなに甘くはありません。

そう、その日の1勝が我々があげた唯一の勝ち星となるのでした…。

まーぼー

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