へっぽこ野球部Ⅱ〜夏合宿〜
くどいようだが最初にこれだけは言っておきたい。私はこの部活にとても満足していた。日頃の活動もそれほど多くないし何より楽しい。そしてなによりチームメイトが起こすズッコケが面白くて仕方なかったのだ。
さて、生意気だと言われてしまうかもしれないが、そんな我がへっぽこ野球部は毎年夏休みに3泊4日の合宿を行っていた。この合宿は私たちにとっては非常に楽しみなイベントだったのだ。
楽しい仲間とお泊まり!!そしてなにより一面使って野球できる‼︎
普段の学校での練習は他の部との兼ね合いで内野練習しかできない。だからこそ、野球場一面使った練習という滅多にない機会に部員は珍しくやる気がみなぎるのだ。
『腐っても鯛』ならぬ『へっぽこでも野球少年!!』なのだ。
そんなある夏合宿の出来事。中学1年生だった私にとっては初めての合宿だった。昼頃に合宿地に到着した我々は昼食を終え意気揚々と練習場に向かった。監督から告げられたグラウンドは宿泊所から歩いて20分くらい。野球道具を担いで歩くにはなかなかの距離だが部員たちの顔にはワクワクが溢れている。その合宿地は山梨県にあるのだが、おそらく関東圏の多くの学校の部活がそこで合宿を行うのだろう。野球場だけでなくサッカー場やテニスコートなどがいくつも並ぶ。その光景にテンションが上がらない者はいないだろう。
『広い野球場が一杯ある!!』
やはり僕らは野球小僧なのだ。
各グラウンドで行われている他校の選手の練習を眺めながら我々は練習場に向かって歩を進める。そして、そんな野球小僧達を待っていたのは…サッカー場だった。
『!?』
照りつける真夏の太陽。何が起きているのかいまいちわからない部員達。
『いったいボクたちはいつからサッカー部になったのでしょうか?』
そんな事を思った選手もいたかもしれない。慌てた表情で監督が何かを確認している。
「あ…間違って予約したかも…」
へっぽこ野球部の監督もやはりへっぽこだった。
その年の夏、我がへっぽこ野球部の合宿はサッカーゴールをグラウンドのすみに移動させる事から始まったのだった。
まーぼー