山本スマッシュ
私の中学1年生の時の担任であった山本先生は非常に厳しい先生だったが、一本芯の通った先生で私はとても好きだった。ダメなものはダメ。その規律が決してブレないのだ。
そんな山本先生には『山本スマッシュ』という生徒達から恐れられていた必殺技があった。それは先生が生徒の正面から両頬の少し下あたりを両手で挟み込むような感じでパチーン!!とやるのだ。
そしてその必殺技の餌食になるのは宿題を忘れた生徒、教科書を忘れた生徒、規則を破った生徒…などである。
「あ!教科書忘れた!!やべー、山本スマッシュだぁ!!」
当然だがこれは大変痛い…が気合は入る。
さて、話は少し変わるが、育ち盛りの中学1年生にとって学校での問題は空腹ではないだろうか。
私の通っていた中学校では4限目の授業の後に40分間の昼休みがあり、その時間に弁当を食べると言う規則であった。しかし、育ち盛りの中1男子はその前には腹が減ってしまうのだ。その結果、一部の生徒は規則よりも早い食事をするようになっていく、いわゆる早弁である。当時の私はどちらかといえば真面目な生徒だったので規則を守り早弁はしていなかった。
ある日の事だった。
その日の私は1限目の授業が終わる前から腹が減っていた。最初は空腹を誤魔化しなんとか我慢していたのだが、段々とその我慢も限界に近づいていく。すると、頭の中に悪魔の姿をした私が現れてこう囁くのだ。
「早弁したら?みんなやってるよ?」
そこに天使の格好をしたもう一人の私が現れる。
『ダメだよ!ルールは守らなくちゃ!!』
最初の休み時間はなんとか耐えきった。しかし、次の授業に全然集中できない。
すると悪魔がまた囁く。
「一口くらいいいんじゃない?」
『ダメだよ!そんな誘惑に負けちゃ!!』と天使が叫ぶ。
「でもさ…お腹減ってたら授業に集中できないんじゃない?」
たしかに!!
天使は消滅してしまった。
そしてついに、私は3限目と4限目の間の休み時間に早弁をしてしまったのだった。半分くらいは食べただろうか。
10%の罪悪感と90%の満足感。
4限目の授業に向けて気力は十分だ。
そんな4限目の授業は例の山本先生の授業。いい感じで小腹が満たされた私は集中して受講することができたのだった。
そして4限目の授業が終わりいよいよ昼休み。残りの弁当を食べようと弁当箱を開けたその時だった。
「ん?まーぼー、なんで弁当半分ないんだ?」
たまたまだったのだろうか。山本先生が私の弁当を覗き込んでいたのだ。
「えぇ・・・っと・・・」
私は焦った。そこに周りのクラスメイトが面白がりながら囃し立てる。
『あれぇ?なんでないんだぁ?』
私は心の中で呪った。
「お前らだっていつもしてるだろぅ…裏切り者ぉっ!!」
しかし今はそんな事に腹を立てている場合ではない。なんとか誤魔化さなくては、と頭をフル回転させて考える。しかし焦れば焦るほど言葉は何も生まれてこない。そして、
「い…入れ忘れたんですか…ねぇ?」
それが私の口からなんとか絞り出た言葉だった。
「そんなわけあるかぁっ!!まーぼー!!立てぇっ!!!」
山本スマッシュが炸裂した。
これだけは言っておきたい。体罰はよくない。そう思う。
しかし、中学1年生だった私の山本先生とのこの様な出来事も楽しく、良い思い出であることも事実なのだ。
まーぼー
まーぼさんへ
場面が目に浮かぶようでクッスとしました。良い教師に出会えましたね。
昨今先生に成りたがらない若者が増えてると聞きかじっています、どうなんですかね。
そう言う私も体育教師志望でし、苦労してやっと就職しましたが、
「夫の夢」?の為3年程で退職しました。
語るも涙聞くも涙で酒無しでは語れません・・・なんちゃって!!(笑)
貴方の投稿はいつも自分自身の昔を思い出を引き出してくれます。
楽しみだよん。
早弁常習者おばさんより
suzuさん
コメントありがとうございます。
そうですね、一人でも良い教師だと思える先生に出会えた私は幸運だったと思います。
最近は…という言い方は余り好きではないのですが、今の先生達が置かれている立場は昔と比べると変わってしまった様に感じます。
suzuさんは体育教師志望だったんですね、いつかその話が聞けるのを楽しみにしています!!