~なんでも法律相談センターにやってきた男~

「おっちゃん、オレ、字が読めんけん、学科試験、いつも落ちるんや、どないしたらええんかな。オレ、運転技術はばっちりや」
「字が読めんのか?」
「運転技術だけで免許証はくれんのかな?」
「無理や、君、いつも乗って来ている軽トラ、無免許運転か?」
「親方には、免許証持ってるいうて、車持たしてくれてるんや。今さら持っとらん言われへんしな。どうしたらええかな」
「そりゃ、運転したらあかん、親方にはほんまのことを言うて、運転やめな。警察官に逮捕されるぞ」
「運転できる言うて、雇ってもらっとるのに無免許や言うたらクビになる」
「でも、あかん!無免許運転はあかんぞ」
「学科試験、オレの代わりにおっちゃんが受けてくれへんかな」
「君は!おっちゃんが聞いた以上、運転させるわけにはいかん。運転せんでええ仕事に変わりな」
「中学しかでてへんのやで?どこが雇ってくれる?」
「わたしが仕事探してやる。その間に夜間中学に通って、読み書きを学びな。覚えたらすぐ受かる」
「また学校ですか?」
「それが一番早道だ。無免許運転で捕まったら、今度はなかなか試験すら受けさせてもらえんよ」
「おっちゃん弁護士やろ?なんとかならんの?」
「ならん!」
「もうええわ、おっちゃんに相談したらなんとかなると思ったのに。もうええです」
「おい!西本君!夜間中学だ!おい、どこへ行く?」
「もう、帰ります」
「車で帰るんかい?」
「交通違反しなければ捕まらへん」
「おい、西本君、ちょっと待て!」

西本君という青年は、この弁護士がなんでも相談を受ける、と打ち出してすぐにやってきた相談者だった。このまま放っておけないと思って、西本を捕まえて、この弁護士が西本と同行して、親方に会って本当のことを伝えて、西本がクビにならないことを確かめた。

親方はむつかしい顔をして言った。
「わしのところで土方してくれるなら、運転免許は持っていようが、なかろうが、車を動かせたらこと足りる。今まで通り働け」
と、まるで無免許でも構わない、という言い方をしたが、弁護士は休みの間、自分の事務所に来させて、運転免許の学科問題を学習させて、六か月ぶりに西本君は晴れて運転免許が合格、交付された。

「おっちゃん、見て!これオレの免許証や、見て!」
私は子供の頭をなでるように、西本君の頭をなでた。
「やれば、出来るな!」
「おっちゃんのおかげや、相談にきて良かった」
「友だちにも言うとけ、無免許運転はいかんと」
「友だち、相談に連れて来て、ええですか」
「お前の友達か?」
と聞くと、いまだに暴走族をやっているから、やめさせてくれ、という。

「なんでも法律相談センター」の看板を出して、相談料も払ってなくて、困っている人たちの相談にのってあげようと、気軽に相談に来れるように始めたのに、このような少年たちが相談に来るとは思っていなかったので、この相談センターの意義の大きいことがわかった。

本人の努力によって解決するものがあるなら、それを見つけてあげるのも、弁護士の仕事だと“無料相談”を前向きに考える意味の大きいことを、私は学んだ。

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