国道168号線~辛い思い出

父親がお世話になっている特老養護施設から容態があまり良くないと連絡があり、急遽帰省することになった。コロナ禍の影響で、県外からの見舞いは原則禁止されていたが、特別にお願いして許可がおりた。

2年前、97歳と長寿であった母が突然倒れ正月2日に慌てて帰省、世の中の仕事始めを待って葬儀を済ませた。年末には、母の3回忌を控えている。父を看取らねばと言っていた母が先に逝ってしまった。そのことを父はまだ知らない。

姉夫婦と一緒に、国道168号線を北上して施設に向かう。このところ流動食も喉が通りにくくなっているという。施設から特別な見舞いの許可が下りたということは最期が近いということか。複雑な思いが交差する。

国道168号線は、新宮市を出て北上し、熊野川町(父が入居する熊野川園がある)、田辺市本宮町、奈良県吉野郡十津川村、五條市、御所市などを経て大阪府枚方市に至る一般国道である。紀伊半島を縦断する幹線道路の一つであり、京阪神地区から新宮への最短ルートでもあることから、整備が急がれる国道である。

数年前に紀伊半島を襲った大雨・洪水の傷跡がまだ一部残っているところもある。切り立った断崖を縫うようにしてカーブが続いており道路幅は決して広くない。当然ながら対向車には十分な注意が必要なことは言うまでもない。

ここを通る時、いつも50年前の学生時代の辛い思い出が頭をかすめる。私は、大学3年生の時、運転免許証を取るため帰省した。新宮市内の自動車学校へ通い短期間で免許を取得した。当時の自動車学校に教官として、小学校の同級生・山崎君のお父さんが勤めていた。小学校卒業以来会っていなかった山崎くんのお父さんと懐かしくお互いの消息を確かめ合ったものだった。

1年後帰省した時に、何とこの168号線で自動車事故があり、車は崖から真っ逆さまに熊野川に転落したことを知った。生徒・教官ともに命を落とすことになったのだが、その教官は1年前に私の隣で教えてくれた、クラスメイト山崎君のお父さんだった。助手席で私のことを懐かしんでくれたお父さん、そして少し唇の厚い幼顔の残る山崎君の顔は今でも忘れない。

あの山崎君は元気だろうか? 人間の運命の儚さとはいかなるものかを思い知らされたことでした。

八咫烏

 

 

 

 

 

 

 

国道168号線~辛い思い出” に対して1件のコメントがあります。

  1. アバター 十男 より:

    「八咫烏」さんへ 父上様と併せて貴方のことも心配です。差し支えなければ連絡乞う(しばらくの間、ライン及びブログ、メールに貴方の足跡がないのでETSの仲間も心配しています)。

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