花と神話~ヒナギク
ヒナギクに姿を変えたニンフの物語です。
その昔、ベリデスという名のニンフがいました。彼女は木の精でした。ある春の日、ベリデスが恋人のエフェギュースと楽しく踊っていました。sこへ果樹の神(または四季の神)ウェルトゥムヌスがその場を通りかかりました。一目見るなりウェルトゥムヌスはベリデスの美しさの虜になってしまいました。それからというもの毎日毎日ウェルトゥムヌスはベリデスのところにやってきて、彼女を自分のものにしようとあれこれ手を尽くすのでした。
「おまえを私のものにできるなら、命も惜しくない。」
とまで言いました。
彼女は恋人エフェギュースを愛していましたから、果樹の神の言うことに耳を貸そうとはしませんでした。しかしそれでも自分を求めてやってくる神から身を守るてだてはありませんでした。そこでべリデスは、貞操の神アルテミスに助けを求めたのです。
「私はエフェギュースを愛しています。どうすればウェルトゥムヌス様の手から逃れることができるでしょうか。私をお守りください。」
と祈りました。アルテミスは彼女の祈りを聞き届けました。彼女の姿をヒナギクに変えてやったのです。
これには、別の言い伝えがあって、果樹の神があまりに熱心に彼女に言い寄ったため、ついにはベリデスはウェルトゥムヌスを愛するようになってしまったというものです。しかし自分は恋人を持つ身だから裏切ることはできないと板挟みになってヒナギクに姿を変えてしまったというものです。
ヒナギクの学名の「ベリス」はこのベリデスからとったものだという説もあります。