花と神話~ニレ

ギリシャ神話における美しい夫婦愛の話といえば、オルぺウスとエウリディケの話でしょう。この二人の愛情とニレの木は深い関係があります。

アポロンとニンフ、カリオペの間に生まれたオルぺウスは毎日金のd竪琴を弾き、素晴らしい声で歌を歌って過ごしていました。音楽の名手として皆から慕われていましたが、アルゴー遠征隊に参加して手柄をたててからは、彼の名前を知らない者はいあにほどにんったのです。

オルペウスの妻はニンフで、名前をエウリュディケといいました。二人はお互いに愛し合い幸せに暮らしていました。

ある日のこと、アポロンとニンフ、キュレネーの間に生まれた息子アリスタイオスがエウリュディケを見初め我が物にしようと追いかけたのです。エウリュディケは逃げたのですがその途中、蛇に咬まれえて死んでしまいました。それからというものオルペウスは竪琴も弾かなくなりました。ただひたすら妻を思って悲しみに暮れるだけの毎日を送っていたのです。悲しみに耐えかねたオルペウスはどんな危険に会っても妻を取り戻そうと冥界に下りて行きました。冥界の番犬も番人も、オルペウスの竪琴を聞くとうっとりして眠ってしまったので、やすやすと冥界の神ハデスのところまで行くことができました。冥界の神は、初めはオルペウスの願いに耳を貸そうとはしませんでしたが、音楽の名手オルペウスの奏でる竪琴が神の心を動かしました。

「こんな美しい音楽を聴いたのは初めてだ。すっかりいい気持ちになった。礼にどんな願いも叶えてやろう。」
と言ったのです。オルペウスが妻を返して欲しいと願ったのは言うまでもありません。
そこで、ハデスとペルセポネはオルペウスに、
「地上に戻るまで、何があっても後ろを振り向かなければ、エウリュディケを地上に連れて行ってもよい。しかし、振り向けば二度と再び彼女は地上に戻れなくなるぞ。」
と言いました。

もちろんオルペウスはこの条件を受け入れました。もうすぐ地上というところまでやって来たオルペウスは、冥界の神の言うことがどうしても信じられなかったからとも、本当に妻が後ろをついてきているか心配になったからとも言われますが、いずれにせよ、後ろを振り向いてしまったのです。

「なぜあなたは振り返ったの。私はあなたと一緒に暮らしたかったのに。私は二度と地上には戻れません。神様との約束を破ったのですもの。」
と言う妻の声がしました。妻の姿はどこにもありません。エウリュディケは冥界に引き戻され、二度とオルペウスのもとには戻ってきませんでした。

エウリュディケを取り返せなかったオルペウスは竪琴を奏でて、悲しみを忘れようとしました。その調べを聞いた大地は新しい生き物を作り出して地上に押し上げました。それがニレの森になったと言われています。オルペウスの奏でる竪琴に合わせて、その森は育ち、緑の寺院を作りました。その木陰でオルペウスは休んだり考え事をし、また歌を歌ったりしていました。そしてその木の下に座り込んだまま長い年月が流れました。

あるとき、オルペウスは自分の死が近いことを知りましたが、それは彼にとってはうれしいことでした。妻のいない地上では生きている気がしなかったからです。そのままその場に倒れると、眠るように死んでいきました。やがて冥界で妻と再会したオルペウスはエウリュディケと二度と離れることはなく、幸せに暮らしたということです。

これが、ニレが「オルペウスの木」と呼ばれる由来です。

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