花と神話~ラン
ラン(オーキッド)はとても美しい花ですが、名前の由来はその美しさにふさわしくありません。
サチュロスは山羊の姿をした山野の精です。ディオニュソスの従者で酒が好きないつもニンフを追いかけ回している困った男だったのです。 サチュロスとニンフの間に生まれたオルキスという若者がいました。父親譲りというか勝手気ままに情熱のおもむくまま生きている若者でした。ディオニュソスの祝祭の日。酒をたらふく飲んだオルキスは一人の女司祭に襲いかかりました。周りにいた者が慌てて押しとどめ、彼の身体をバラバラにしてしまたったのです。
父親のサチュロスは、
「息子を元の身体に戻してください。」
と神々に祈りましたが、この若者はとにかく厄介ものであったし、あろうことか、司祭に襲いかかったのだから死をもって償いうのが当然だと、その願いは聞き届けられませんでした。
しかし、身体をバラバラにしたのはやり過ぎだったということになって、オルキスという名前の花に変えてやったということです。花になっても元来の性格は変わらなかったとみえて、この花の根を食べると淫乱で粗暴になると言われています。