ボクのロンドン滞在記~シン日英同盟めざして~ (その14) ミュージカル『レ・ミゼラブル』で予期せぬトラブルが・・・
共用の会議室で、大型のスクリーンの中にチームメンバーの顔が小窓で映し出されます。
説明用の資料を共有して、画面の中央に映しだし、それを参加者が見ながら、説明を聴いて、質問したりすると言うのがリモートでの会議のスタイルです。
コロナ以降、これがすっかり世界的に定着しました。ビデオ会議の良し悪しは別として、否応なくこういうシステムを使わざるを得ない、使ってみればそれなりに使えるし便利なところもあることに気がついた、もちろん不便もある、というのが現時点での状況ではないでしょうか。
お昼はエルちゃんとお弁当を買いに行くことになりました。
学内の別な建物にまた別の食事コーナーがあります。この建物はダイソン研究所といって、掃除機で有名なダイソンが資金を醵出して作られたそうです。そこで、インド料理の野菜のサモサとコーラを買いました。
そのお弁当をオフィスに持ち帰り、共用スペースで一緒に食べました。(サモサがうれしいほどうまかった)。
エルちゃん(女性)はスペイン出身です。たぶん30前半と思います。よくよく話をしてみると、リバプール大学に留学し、化学を専攻して博士号をとったとのことです。周りの女性たちもドクターがふつうで、前にも書きましたが、オフィスでは優秀なリケジョに囲まれているというわけです。
ボクからは「かつてリバプールを訪ねてビートルズゆかりの場所をいくつか訪ねたんだよね」などと、他愛のない話をしました。
食事をしてから、オフィスの席に戻り、お昼休みに試しに調べてみたところ、偶然と言うべきか、ミュージカル『レミゼラブル』のプレミア席が1つ空いているのを発見しました。
値段は、125ポンド=約2万円で、けっして安くはありません。しかし、即断即決、画面上のボタンをクリックして購入しました。
手続きは申し込みから決済まですべてネット上で完結し、電子チケットがスマホに届きます。そう言えば、航空券、ウーバーのタクシー、長距離の電車などもすべて予約、申し込み、決済がすべてネット上で完結できます。チケットも電子チケットが当たり前になっています。本当に便利な世の中になったものです。
5時の退社時間になり、隣のエルちゃんにさよならを言って、オフィスを後にしました。
ミュージカル開始は7時半なので、時間はたっぷりあります。大学からぶらぶら歩きながら、行き当たりばったりでバスに乗ってみようと思いつきました。
停留所から、行く先も決めずに、ダブルデッカー(2階建て)で赤い車体のロンドンバスに乗り込んでみました。もちろん、見晴らしのよい2階の席に座ります。先頭の席はだいたい誰かに占領されています。
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でも、というか、結局終点は、それほど遠くないビクトリア駅でした。この駅は地下鉄と長距離の地上駅のターミナルになっており、多くの人が行き交っています。構内の店の前に座り、駅の雑踏を眺めながら軽い食事をとりました。

さて、こんどは地下鉄でピカデリーサーカスに移動し、劇場に赴きます。
以前から、観たいと思っていた『レ・ミゼラブル』です。かつてロンドンでは、『オペラ座の怪人』を観て感激したことがあります。この作品も、ロンドン滞在中に必ず観ようと思っていましたが、予想外に早めに実現しました。
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しかし簡単には問屋が卸さないというのがボクの常なのです。今日のトラブルは何でしょうか。
劇が始まり、さあ、いよいよ佳境に入ろうかという場面で、緊急アナウンスが場内に響き渡りました。
Due to an event beyond our control, please take an emergency action to go way out…
観客はいっせいに立ち上がり、そう慌てる様子もなく、退場を始めました。
ボクも移動しながら、途中で、立って誘導している女性の係に尋ねました。
What happened? (どうしたの)
I don’t know either. (私もわからないんです)
そうこうするうちに、消防車がお出ましです。(動画が見られます)
結局30分ほども退去させられていましたたが、また館内に戻るように係員が促します。こういうとき、電子チケットをまた見せれば良いので便利です。
やれやれ、元の席に戻ることができました。なにごともなかったかのようにミュージカルが再開します。
すっかり気がそがれたかと思ったのですが、またぐいぐいと一大スペクタルと荘厳な音楽に引き込まれていきます。やがてフィナーレ、観客は大興奮のまま、総立ちで拍手喝采の内に幕が閉じられました。
風戸 俊城
ハイム在住。現役時代は中東、東南アジアの4か国に駐在し、40年勤務した後、現在は英国と日本を結ぶ知財プロモーターとして働く。経済・産業分野の翻訳業も手がける。