ボクのロンドン滞在記~シン日英同盟めざして~ (その21) カツカレーを食べ、モームの家を訪ねる

(前回まで)ロンドンで食べた粗餐の記録をたどってみました。現地食主義の前任者Tちゃんに言わせれば、日本食もどきを食べようと執着するボクは堕落しているらしいです・・・
 
7月4日(月)晴れ
 
この日は朝から期するものがありました。

お昼ごはんは、先週の金曜日午後に見つけた、学食のカツカレーをたべてやろうと心に決めていたのです。

お昼やすみになるや、すぐに学食に向かいました。そして学生たちと一緒の行列に並び、さっそくカツカレーを注文しました。丸い紙製のお皿、それもふたが付けられるようになっている、言うなれば平たい円柱形をしている使い捨ての食器にごはん、とんかつが乗っかり、カレーが掛けられ、紅ショウガが添えられています。

食堂のテーブルに座って、ひとくち。おいしい!
いけるよー。

カツカレーはロンドン子にも大いに受けており、いまやブームとのことで、これは日本人にとってもありがたいことです。

このカツカレーの評点は75点。

日本のレベルではおいしいということにならないのでしょうが、こちらの味に慣れてきてる中で、久しぶりの日本風のカレーがうれしかったのでちょっと評価が甘いかもしれません。

なお、カレーが売られているのは、学食の一角にあるKimiko と言うコーナーです。ショーケースには、おにぎりやお寿司も置かれており、なんちゃっての類いですが日本食のお店です。

7月5日(火)晴れ

ウイリアム・サマセットモームがかつて住んだという住居を訪ねました。

仕事の帰りに、いつまでも明るい町中を散策します。今日は、通勤ルートの乗換駅、グリーンパークで降りて、7,8分も散策しながら、サマセット・モームの家を探しました。

ちなみにグリーンパークには日本大使館があります。ひさしぶりに風にたなびく日本国旗を眺めました。

こじゃれたパブやレストランが建ち並ぶ道を通り抜けていきます(帰り道に、写真にあるしゃれたパブで一杯やりました)。

たどり着いた住居はいまはホテル形式のアパートメントになっていました。

著名人が住んだことを示す青いプレートにモームの名前が刻まれています。
この家で、モームは「人間の絆」を書いたとのこと。彼が「人間の絆」を脱稿したのが1914年、翌年に初版が発行されました。モームが41歳のときです。この作品は作者自身の精神形成を克明に描いた名作です。(ちなみに筆者の愛読書の1つです。)

敬愛するモームの足跡に触れようとしばらく周りをうろつきましたが、残念ながらなにもみつかりませんでした。

ところで、「人間の絆」の英語原題は、Of Human Bondage です。

この Of が曲者です。そして Bondage です。これをどう訳すかが気になります。

果たして『人間の絆』が適訳なのだろうか、などと・・・・・・。

「絆」とは、たとえ断とうとしても断ち切れない人との結びつきのことを言います。それだけで人間関係を含意している言葉と言えます。英語の bondage には、束縛とか隷属という意味があります。

したがって、原題の本来的な意味としては、「人間を束縛するもの(から)」、「人間の隷属(について)」ということだと考えます。( )内の(から)とか(について)は、Of の訳し方の例です。

おそらくサマセット・モームは、人間を縛り付け、人間が隷属させられる状態からいかに脱することができるかを考えて、考えて、考え抜いたのだと思います。それは、Thinking of Human Bondage と言うことです。

「人間の絆」に代わりうる候補名をいろいろと考えてみました。しかし、ひと言で言い表すとの観点からも、また商業的な意味合いからも、やはり「人間の絆」が最適の題名になるのだろうとの結論に達しました。

そんなことを考えているときにふと思い出したのが、昨日の出来事です。

自宅からフロイトの家の前を通って、大通りに向かう駅へと続く坂道でのことです。すれちがった男の二人連れが急に立ち止まり、抱擁をしたかと思うと、おもむろに熱烈なキスを交わし始めたのです。1人は紳士、もう1人は若者風で身なりもちゃんとしていました。

つい先日もピカデリーサーカスの繁華街でそんな光景に出会いましたから、そう驚くこともないのかも知れません。しかし、むしろ男女間でもそれほど熱烈な交歓を町中でそうそう見かけないのですから、唖然とさせられました。

イギリスでは、昔は同性愛が法律で禁じられていました。オスカーワイルドなどはそのために牢獄につながれました。実は、サマセットモームも自身、4分の3はノーマルで、4分の1はクイアー(同性愛者)だと告白しています。

(つづく)

 

風戸 俊城

ハイム在住。現役時代は中東、東南アジアの4か国に駐在し、40年勤務した後、現在は英国と日本を結ぶ知財プロモーターとして働く。経済・産業分野の翻訳業も手がける。

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