ボクのロンドン滞在記~シン日英同盟めざして~ (その29) ロンドン遺跡名所探訪③カール・マルクスの墓(ハイゲイト墓地)探訪

(前回まで)現在住んでいるフラットから徒歩でも1分くらいの至近距離にある、フロイト博物館を尋ねました。ナチからの追撃を逃れ、オーストラリアからロンドンに亡命したフロイトが身を寄せ、その後没命後も家族が住んだ家がいまは博物館として公開されています・・・・・・
 
 
7月10日(日)快晴
カール・マルクスの墓(ハイゲイト墓地)

カール・マルクスは、各地を転々としたのち、1849年にロンドンに移住します。当初は短期滞在のつもりでしたが、1883年死没するまで住み続け、当地が終の住処となりました。

ロンドンでは極貧生活を送る中で、毎日のように大英博物館図書館に通い、開館から閉館まで勉強をし続け、資本論を書き上げたといいます。

当時の生活ぶりを示すこんな記録が残っています。

『プロイセン警察がロンドンに放っていたスパイの報告書によれば「(マルクスは)ロンドンの最も安い、最も環境の悪い界隈で暮らしている。部屋はふた部屋しかなく、家具はどれも壊れていてボロボロ。上品な物は何もない。部屋の中は散らかっている。

居間の真ん中に油布で覆われた大きな机があるが、その上には彼の原稿やら書物やらと一緒に子供の玩具や細君の裁縫道具、割れたコップ、汚れたスプーン、ナイフ、フォーク、ランプ、インク壺、パイプ、煙草の灰などが所狭しと並んでいる。部屋の中に初めて入ると煙草の煙で涙がこぼれ、何も見えない。

目が慣れてくるまで洞穴の中に潜ったかのような印象である。全ての物が汚く、埃だらけなので腰をかけるだけでも危険だ。

椅子の一つは脚が3つしかないし、もう一個の満足な脚の椅子は子供たちが遊び場にしていた。その椅子が客に出される椅子なのだが、うっかりそれに座れば確実にズボンを汚してしまう」という有様だったという。

また当時ソーホー周辺は不衛生で病が流行していたので、マルクス家の子供たちもこの時期に三人が落命した。その葬儀費用さえマルクスには捻出することができなかった』

さて、マルクスの墓を尋ねようと、家から徒歩とバスに乗って約30分、バスを降りて、坂道をずっと上っていくのだがけっこうしんどい。300メートルはとぼとぼと歩いたでしょうか。

ようやくハイゲイト墓地に着きました。門で入場料として4.5ポンド払います。

マルクスの墓は馬鹿でかいと表現するのがぴったりです。あまりに大きいので、大きさが分かるように、たまたまそばで写真を撮っていた男性に頼んで、墓と並んだところを撮ってもらいました。
この墓の存在を知ったのは、じつは映画で観たことがあるからでした。ダイアン・キートン主演の「ロンドン、人生始めます」という映画ですが、この原題は Hampstead (ハムステッド)という素っ気ないものです。ハムステッドはロンドンの高級住宅街の地名なのです。

映画のキャッチコピーは次のような感じです。

『ロンドンのハムステッドの高級マンションで暮らす未亡人のエミリーは、夫亡きあと発覚した浮気や借金のこと、減っていく貯金のこと、上辺ばかりのご近所づきあい、海外勤務に行ってしまう一人息子のことなど様々な問題に直面している。

ある日、自然に囲まれ手作りの小屋で暮らすドナルドと出会う。庭でのディナー、気ままな読書、森でのピクニック…余計なモノを持たず幸福に暮らす頑固だけど温かいドナルドに惹かれていくエミリー。

だが、ある事件がドナルドに降りかかる・・・・・・』

このエミリーがドナルドと知り合い、まあ言ってみればデートみたいにして語らう場面で、このマルクスの墓が出てくるのです。そして、てっきり浮浪者だと思ったその男は意外に知的で不思議な魅力を持っていました。やがて2人は・・・・・・。さらに、このハムステッドの高級住宅街にある、森のような中でずっと暮らしてきた男の居住権をめぐって裁判に発展します。この映画は、実際にあった話をベースにしているとのことです。

さて、それにしても墓地の中は、まさに墓、墓、墓です。高級住宅地にあるということから、意匠を凝らした個性的な墓が多いです。古くなっているのと地盤が整備されてないのか傾いているものも少なくありません。地面の下に遺骸が埋葬されているわけですし。ずっと巡りながら墓を見ていると墓疲れしてきます。

 

(つづく)

 

風戸 俊城

ハイム在住。現役時代は中東、東南アジアの4か国に駐在し、40年勤務した後、現在は英国と日本を結ぶ知財プロモーターとして働く。経済・産業分野の翻訳業も手がける。

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