まっちゃんのワクワク農業ライフ(その13)人生の楽土を歩む(3の1)
(編集者注)本年6月までお送りした「まっちゃんのワクワク農業ライフ」の集大成ともいうべき記事を、NPO法人スモールファーマーズのご好意により、転載させていただきます。今回は全3回の第1回をお送りします。
海を臨み田畑と暮らす、人生の楽土。探求を続け、歩み続ける松尾さんの物語
Small Story
はじまりは或る夏の日。汗を流して得たものは何ものにも代えがたい。
「まだ会社員だったときにね、父親の代わりに実家の庭木を整えた。暑い暑い夏の日でさ、盛大に汗をかいた。夜に父親が労ってビールをついでくれて、枝豆を食べたんだよ。そしたらそれがとにかく美味い!夜も部活の合宿みたいに爆睡して、翌朝はバッチリ快便でね、これだ、このリズムだ!って思ったわけ」
呵呵と笑い、快活に話す松尾さん。松尾さんは現在69歳。京都市内にある自宅と、宮津市日置の拠点を行き来して暮らし、都市と自然サイクルの中での暮らしを実現するラーバニスト。(ラーバンは、農村・田園を意味する「ルーラル」と、都市を意味する「アーバン」を組み合わせた言葉。ラーバニストは、都市にこだわらず、都市から農村への移住や、都市にも農村にも拠点を置いて自然のサイクルの中で暮らしを考える人のこと)
「50代になろうってときに、自分の人生について考えてみたんですよ。そうしたら残りの人生20年か30年。会社にしがみついていても先が見えてるなって思った。そんなときにこの夏の体験をして、このリズムが非常に心地よかった。汗を流して働いて美味い物を食うってのはとにかく健康に良い。そのとき、農業をしようって思い立ったんです」
一念発起した松尾さんは、当初独学で農を学び実践。その後、橋本力男氏の堆肥セミナーや、社会人向け週末農学校スモールファーマーズで農を学びました。
「橋本さんに学んで、畑の中の微生物がいかに作用するのかってことを聞いて、もう目からウロコ!そうだったのか!って感動したよ。その後スモールファーマーズでも有機栽培を座学と実践で学んで、色々とシンクロすることが多くてね。ますます堆肥や農に興味が沸いて、もう老後にやることはこれだ!って決めたんだ」
そう思ったら即行動。
「はじめは京都市内でちまちまとやってたんだけどね、堆肥をつくろうと思ったら落ち葉を集めたりして広い場所がいる。更に作ったものをすぐ食べられるような場所はないかっていうのと、もともと“海を見ながら死にたい”っていう浪漫があって。そんな土地を探して探して、宮津にたどり着いたんだ。海も釣りも好きだしね、海の見える絶景の畑なんて、他にはないでしょ?」
ひと目で惚れ込んだ土地は10年以上の放棄地。所有者との交渉の末、畑と海を見下ろす絶景の家を建て、松尾さんのラーバン生活がはじまりました。
「でもね、さぁ移住だって思ったとき取れた大きな仕事の影響で、結局会社員を続けることになってしまって。それが55歳のとき。もちろん仕事はしっかりやったけど、代わりに週休4日をくれって上司に交渉したよ!」
金曜の夜に東京を出て新幹線で京都へ。そこから宮津に行き3日滞在、4日目の朝にまた東京に戻る生活。「それが63歳まで続いてね、まぁいわゆる半農半Xかな」
長距離移動も、仕事との並行も大変だったのでは?と尋ねると「でもまぁ、リタイア後の夢のある生活の準備って思うと疲れも感じないし、会社で僕のつくった野菜を売ったりね、色々楽しかったよ。それに営業職だったらから、週末には関西のお客さんのアポを入れたりしてさ、みんなも週末は関西に行くんだろ?っていう空気でね、それも面白かった」と茶目っ気たっぷりに笑う松尾さんなのでした。
次回へ続きます。
(編集者注)NPO法人スモールファーマーズのご案内他については次をご参照下さい。
1)スモールファーマーズの案内 https://note.com/small_farmers
2)スモールファーマーズのサポートメンバーの案内 https://note.com/small_farmers/n/nf5ec19348d96
3)スモールファーマーズのライン友だちの案内 https://lin.ee/6SnMMMF
著者紹介
松尾 吉高
京都府宮津市在住。1953年京都生まれ。商社在職中に海外はサウジアラビア、イラン、マレーシア、上海などに勤務。62歳でリタイアし、本格的に農業に取り組む。趣味 ゴルフ、スキー、釣り、旅行、歴史の勉強。マイブームは歩き四国お遍路。現在オリーブ栽培で地域おこしに取り組み中。