明るい弱虫ライターあつこ61のびくびく日記(16)定年後の夫の育て方――オットと共に生きる勇気みたいなものが見えたのだ

「そば食べる?」
食べるけど?なんで?
「じゃあ茹でるよ」

土曜日のお昼の12時半過ぎ。

平日は私は会社でお昼を食べる。
主夫になった夫は、自宅で。
土日は一緒にお昼を食べる。

ほんの3年前までは考えもしなかった逆転劇。
オットがお昼ご飯作るんだって?

別にカップラーメンでもよかったけれど。
作ってくれるならそれはそれでありがたい。
というか、出来るのか?

「できたよ」
の声とともにテーブルに。

●ぜいたくな。
待っていればいいなんて。

●いやいや、昨今、料理をする夫なんて珍しくもない。

そんな2つの声が頭の中で聞こえている。

おお、おそば屋さんみたいな器に盛られている。
ずっと使っていなかったのに、
どこから出してきたの?
ちゃんと洗った?

ネギを刻んで、のりをのせて。
おや、ガラスのポットに入ったそば湯もある。

きゅうりが輪切りになっている。
「浅漬けの素」で漬物にするって言ってたなぁ。

台湾風カステラ(先日、軽井沢のスーパーで買ってきた)も添えられていた。

見栄え良すぎ。

お昼ご飯であって、お昼ご飯でないような?

あつこ「お昼1人で食べる時も
こうやってお蕎麦屋さんみたいな感じにしてるの?」

理科系オット「してない。普通の皿」

ーーー

母は老人ホームに入り、
子供たちは巣立ち。
広すぎる家の中にも慣れた。
自分の部屋を60歳になって再び手に入れた。

2人だけだ。
なんだかつまらない。
ほんとつまらない。
恋、なんて忘れた。もはや仙人の境地。

ーーー
でも、このおそばたちが雄弁に物語るのだ。

2人のお昼は楽しく過ごしたい。

はいはい、わかったわかった。

そっかぁ。こんなのが作れるようになったんだね。
簡単だけど、でも、がんばったよね。

既視感のある感情。
これは。 

そうか。
子供を見ている母親の気持ちだ。
うんうん。

ーーー

おやすみを言う時間。

あつこ「今日のお昼はおいしかったです。どうもありがとう」

理科系オット「どういたしまして。何も言わないから、気に入らないのかと思った」

あつこ「あのおそばから、
これから20年間くらい
一緒に生きていく勇気みたいなものが
見えた気がしたから」

理科系オット「ソバだけにバッーと、見えた?」

あつこ「…」

理科系オット「うどんだったら、ドーンと見えるんだ」

あつこ「…」

(黙って部屋に行ってドアを閉める)

とりあえず、おそばに込めた気持ちは受け取りました。
あと20年ちょっと? 30年?
一緒に生きていきましょう。

 

つづく

 

編集者注:
明るい弱虫ライターあつこ61さんは、noteで毎日記事を更新中です。https://note.com/atsuko_writer55

 

著者紹介
あつこ(61)明るい弱虫ライター
●明るいのに小心者。びくびく。●日本証券業協会「お金について考えていること」入賞 ●定年「理科系夫」育て●朝日新聞リライフ「ビブリオバトル」優勝 ●関心のあること Apple Watch、睡眠分析、お墓探し、メルカリ、任天堂Switch、ポケモン、二世帯住宅、介護、孫保育、通信大学
●noteで毎日記事を更新中です。https://note.com/atsuko_writer55

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