ボクのロンドン滞在記~シン日英同盟めざして~ (その24) 大英図書館でマグナカルタに見入る
古い歴史に触れたくなり、勤務後オフィスから大英図書館に向かいました。
大英博物館には何度も足を運んだことがありますが、大英図書館は初めてです。
今日ロンドンは真夏の暑さでしたが、図書館の展示室は薄暗く、空調が効いていました。
特別室の静謐な空気の中で、時空を越えてマグナカルタをじっと見つめました。なお、原本は失われており、ここにあるのは当時作製された写本の1つと言われています。
マグナカルタ(Magna Carta)には、1215年、イギリスのプランタジネット朝のジョン国王が承認のシール(封蝋)をしたと言われます。面白いことに、この歴史を学んだときに、なんとなくサイン(署名)をしたとイメージしがちですが、実際は、サインではなく封蝋をして印璽を押したことで承認したのです。
なお、下の写真は、映画「冬のライオン」(1968年アカデミー賞)の1場面ですが、都合の良いことに重要人物がすべて一堂に会しています。なぜこれを紹介したかというと、ジョン王の青年時代が垣間見えることと、複雑な親子、兄弟関係が分かるからです。
映画の紹介は次の通りです。
「1183年のクリスマスイブの夜。イギリス国王ヘンリー2世は後継者を決めるために一族を召集した。その中には、王の居城から離れて軟禁されていた王妃エレノアの姿もあった。二人はそれぞれの思惑をかかえ、別々の後継候補の後押しをする……。王位継承をめぐる争いを描いた歴史ドラマ」
面白そう、と思うでしょう。あに図らんや。相当退屈で歴史的知識と好奇心がないと2時間強のこの映画はとてもつらい。
なぜか。舞台劇のような映画で物語をすべてセリフで語らせているからです。
でもヘンリー2世役のピーター・オトゥールと王妃エリノアを演ずるキャサリン・ヘプバーンの演技はすばらしい。彼らの朗々たる英語のセリフにじっと耳を傾けていたくなります。
また名優アンソニー・ホプキンスが新人俳優としてリチャード(後のリチャード1世)を演じています。
登場人物を写真の順に(右から)紹介します。
・フィリップ2世……若きフランス王
・ヘンリー2世……演じているのは、ピーター・オトゥール
・エリノア……王妃。ヘンリー2世との仲は冷え切っている……演じているのは、キャサリン・ヘップバーン
・アリース……ヘンリー2世の愛人。フィリップの異母姉
・リチャード……ヘンリー2世とエレノアの3男(上が亡くなり、継嗣となった)。後の2代目国王、リチャード1世……演じているのは、アンソニー・ホプキンス
・ジェフリー・……4男
・ジョン・・・5男。後の3代目国王、ジョン(愚鈍な国王として有名。作中でも思いっきりアホなあんちゃんとして描かれています)。
しかしこの映画で描かれたエピソードをすべて史実と信じ込むとおそらく間違ってしまいます。
史実はこうです。
『1184年11月30日、リチャード、ジェフリー、ジョンの3人の息子を始め一時釈放したエリノアも加えて、ウェストミンスター宮殿(筆者注 ウェストミンスター寺院ではない!)で聖アンドレの日を家族で祝った。
続いて12月にウィンザー城で家族会議を開き、若ヘンリー王の死で変更に迫られたアンジュー帝国の領地相続について話し合った。
リチャードは母の気質を最も濃厚に受け継いだ人物といわれ、父の死後にイングランド王となってからは戦争に明け暮れ、「獅子心王」とあだ名される勇敢な戦士であったが、ヘンリー2世はアリエノールの影響力が大きいリチャードを危険視して愛情を与えず、代わりにアリエノールに疎まれたジョンを溺愛した』。(Wikipedia)
上記のようにリチャード1世は、獅子心王と呼ばれた勇猛果敢な国王で第3回十字軍に参加しています。
ジョンは愚かな王だったため、イギリス王室ではジョンの2代目を名付けることがないと言われています。彼のあだ名は、「欠地王」という不名誉なものです。なぜかというと、フィリップ2世にフランス領の大半を奪われたからです。またローマ教皇インノケンティウス3世に屈服します(カノッサの屈辱の英国版といえましょう)。
その挙げ句、貴族からマグナカルタ(大憲章)を突きつけられ、王が課税する場合には貴族の承認が必要という要求を受け入れてしまったというわけです。
さて、今日は金曜日、明日は週末の休みです。明日は朝早く起きて、東に向かうつもりです。
風戸 俊城
ハイム在住。現役時代は中東、東南アジアの4か国に駐在し、40年勤務した後、現在は英国と日本を結ぶ知財プロモーターとして働く。経済・産業分野の翻訳業も手がける。