ボクのロンドン滞在記~シン日英同盟めざして~ (その38) 英国王朝史③プランタジネット朝(中編)

本日は、特別編の英国王朝史第3回です。
 
プランタジネット朝(中編)

前回プランタジネット朝の歴代国王の覚え方を書きました。覚えていますか。今日は次の3人の物語についてお話しします。

ヘンリー2世—>便利に
リチャード1世—>リーチ
ジョン—>チョンの間に着く

さてヘンリー2世である。おそらく高校で世界史を習っても、「ヘンリー2世は、フランスのアンジュー伯がイングランド王として迎えられ、ヘンリー2世を名乗る。そこでイングランドはフランスの西半分も領有することになった」などの記述ですまされる。それじゃ、なんにも分からない。

そこで、写真をご覧くだされ。

映画「冬のライオン」(1968年アカデミー賞)の1場面ですが、都合の良いことに重要人物がすべて一堂に会しています。

映画の紹介は次の通り。

「1183年のクリスマスイブの夜。イギリス国王ヘンリー2世は後継者を決めるために一族を召集した。その中には、王の居城から離れて軟禁されていた王妃エレノア(アリエノール)の姿もあった。二人はそれぞれの思惑をかかえ、別々の後継候補の後押しをする……。王位継承をめぐる争いを描いた歴史ドラマ」とあります。

面白そう、と思うでしょう。あに図らんや。相当退屈で歴史的知識と好奇心がないと2時間強のこの映画はつらいよう。なぜか。舞台劇のような映画で物語をすべてセリフで語らせているから。

でもヘンリー2世役のピーター・オトゥールと王妃エリノアを演ずるキャサリン・ヘプバーンの演技はすばらしい。彼らの朗々たる英語のセリフにじっと耳を傾けていたくなる(なんちゃって、寝落ちしそうになったの誰や)。また名優アンソニー・ホプキンスが新人俳優としてリチャードを演じています。

登場人物を写真の順に(右から)紹介します。

・フィリップ2世・・・若きフランス王
・ヘンリー2世
・アリエノール・・・王妃。ヘンリー2世との仲は冷え切っている。
・アリース・・・ヘンリー2世の愛人。フィリップの異母姉
・リチャード・・・ヘンリー2世とアリエノールの3男(上が亡くなり、実質は長男)。後の2代目国王、リチャード1世
・ジェフリー・・・4男
・ジョン・・・5男。後の3代目国王、ジョン(愚鈍な国王として有名。作中でも思いっきりアホなあんちゃんとして描かれている)

しかしこの映画を史実と信じ込むとおそらく間違ってしまう。

史実では、『1184年11月30日、リチャード、ジェフリー、ジョンの3人の息子を始め一時釈放したエリノアも加えて、ウェストミンスター宮殿(筆者注 ウェストミンスター寺院ではない!)で聖アンドレの日を家族で祝った。

続いて12月にウィンザー城で家族会議を開き、若ヘンリー王の死で変更に迫られたアンジュー帝国の領地相続について話し合った。リチャードは母の気質を最も濃厚に受け継いだ人物といわれ、父の死後にイングランド王となってからは戦争に明け暮れ、「獅子心王」(ライオンハート)とあだ名される勇敢な戦士であったが、ヘンリー2世はアリエノールの影響力が大きいリチャードを危険視して愛情を与えず、代わりにアリエノールに疎まれたジョンを溺愛した。』(Wikipedia)と書かれている。

上記のようにリチャード1世は、獅子心王と呼ばれた勇猛果敢な国王で第3回十字軍に参加している。ジョンは愚かな王だったため、イギリス皇室ではジョンの2代目を名付けることがないという。ジョンの呼び名は、「欠地王」という不名誉なものです。

なぜかというと、ジョンは、フィリップ2世にフランス領の大半を奪われます。ローマ教皇インノケンティウス3世に屈服します(イングランド版カノッサの屈辱ともいうべき事件です)。

貴族からマグナカルタ(大憲章)を突きつけられ、王の課税権には貴族の承認が必要という要求を受け入れます(しかし面白いことにサインはしてないのですよ)。

はーい、今日はここまで。
ちなみに、「冬のライオン」は2022年の3月、日本で舞台化されており、佐々木蔵之介がヘンリー2世、高畑淳子がアリエノールを演じたとのこと。うーん、どうだろう。やはり映画の方が良いと思いますが・・・。笑

次回の英国王朝史④プランタジネット朝(後編)に続きます。

 
(つづく)

 

風戸 俊城

ハイム在住。現役時代は中東、東南アジアの4か国に駐在し、40年勤務した後、現在は英国と日本を結ぶ知財プロモーターとして働く。経済・産業分野の翻訳業も手がける。

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