ボクのロンドン滞在記~シン日英同盟めざして~(その54) 小包を日本へ送る②

(前回まで)英国の郵政民営化の会社 Parcelforce のオンライン手続きで、日本に別送する小包の船積書類を作成して、お金はクレジットカードで払い込みました。あとは、実際に小包をポストオフィスに持ち込んで、手続き完了をするまでになりました。

2022年7月26日(月曜) 曇り

さて、いよいよロンドンから実際に荷造りした小包を持ち込むことになりました。

オンラインでの手続きについての苦労話は昨日書きました。できあがった船積書類は、大学のオフィスで同僚のローラに頼んだところ、ただで印刷してくれました。ラッキー!
 
今日は実践編です。

今回使う郵送手段は「EMS]というもので、世界120以上の国や地域に30kgまでの書類や荷物を遅れる国際郵便です。

EMSなら、日本の自宅から米国向けに何度かEMSで小包を送ったことがあります。最寄りの郵便局に荷物を持ち込みましたが、その際もネットで船積書類を作成しました。今回も場所がロンドンであるだけで、原理的には同じことなのですが、英国特有の事情もあって、なかなかうまく行きません。今日はその苦労話です。

まずは、物理的に荷物をポストオフィスに持ち込む手段をどうするかです。
じつはこちらでは小包を集荷してくれるサービスもやっています。でも、これは一人暮らしのボクにとってはとてもリスクが高い。

その理由の1つが、英国ではパブリックサービスの質というかレベルが期待できないこと。
2つめが、集荷を頼んでもいつ取りに来てくれるか分からないこと。こちらの事情を知っていれば、むしろ時間通りに集配にくるはずがないということが容易に想像できます。そのうえ、当然集荷サービスの分だけ値段も上がります。

そこで、直接ポストオフィスへの持ち込み(ドロップオフ)を選択しました。

小包の重量は申告制で、そこで部屋で荷造りをしてから自分で持ち上げて目星を付けて、15KGで申告してありました。面白いことに、というかいい加減なことに、あとで実際にポストオフィスで計量されることもありませんでした。

さて、いよいよ今回の苦労話の始まりです。

どうやって持ち込むかを思案したのですが、結局、もっとも費用のかからない方法として、自力で荷物を抱えて徒歩で行くことにしました。つまり荷造りした、自己申告とは言え15KGという段ボール箱をアパートの4階から最寄りのポストオフィスまでえっちらおっちらと運ぶということです。

頭の中で、アパートからポストオフィスまでの道のりを思い浮かべました。ざっと距離にして700~800メートルはあります。途中急な坂道がありますが、さいわい下り坂です。

意を決して小包を抱えて部屋を出ました。ドアを開け、廊下に出たところでお隣の部屋から日本人女性が出てきました。1カ月以上滞在していて初めて会う方でしたが、いままでフラット内で遭遇した「頭にターバン、下半身は下着でシカトされた中年女性」やこちらのあいさつに「ケラケラケラとしか笑わなかった女」とは種類が異なる、ふつうの日本女性でした。それもわりと若くきれいな感じ。その女性はボクの小包をみて「ご帰国ですか?」と尋ねられた。「そうなんです。これからポストオフィスに出してくるんです」、「たいへんですね」なんて会話を交わす。もっと早くあいさつしたかったよ。そうならアパートの印象も変わったろうに。ザンネン。

4階から1階までなんとか降りる。それから門を出て、西方向に住宅街をとぼとぼと歩く。フロイト博物館を左手に見ながら通り過ぎ、急な坂道を降りる。フィンチリーロード大通りにでて、横断歩道を渡り、反対側の歩道をさらに西に進む。まちがいなく最低でも7~800メートルの道のりだろう。ようやくポストオフィスの看板が見えてきた。

この間、10回は休んだと思います。道ばたに荷物を置くわけにいかないので、舗道の柵とか、建物の出っ張りなんかを利用して小包を支える。だんだん腕が疲れてぷるぷる震える感じになってきました。腰はだいじょうぶでしたが。とにかく疲れました。

ようやくポストオフィスの看板がある店に入りましたが、ドアを開けると雑貨や文房具がならぶ小売店の店構えです。店員に尋ねると、店の奥にポストオフィスがあるというではありませんか。

驚くことにこれが英国の郵政民営化か?ポストオフィスは、ロンドンの中心なら立派な構えだが、郊外はみなこんな感じらしい。とにかくこのポストオフィスは、日本の郵便局がきっちりとしているのとは正反対で、雑然、不潔、不整理・不整頓と言った感じで、見るからに能率が悪そうなムードが漂っています。

実際に係員が座って対応している窓口は1つです。つまり、客の応対はそこだけしかやってないようです。
その窓口に1人、荷物を扱うカウンターのなかに1人、お客がならんでいる側に1人、合計で女の事務員3人で仕事をやっているのですが、いずれもやる気がまったく見られない。人種的にはインドか中東系で肌の色が黒い(けっして差別しているわけでありませが、移民であることが明白)。

すでに4,5人のお客が並んでいます。ボクも仕方なく最後尾につきました。

見ていると窓口では現金も扱っているようで、窓口には Travel Moneyと書かれています。郵便貯金みたいな処理をしているのでしょうか。現に窓口にいるお客はお札を数えて窓口の事務員とやりとりしています。このやりとりがまったくもってチンタラと時間がかかっていて、歯がゆいことこの上ない。

このままではボクの順番がやってくるのはいつになるかわかりません。小包でもこの列に並ばなければならないのか疑問だったので、他の事務員に小包の箱を指さして見せて、ここに並んでいてよいのかというジェスチャーをしてみました。すると、顎を使ってそうだという無言の返事が返ってきました。やれやれ。

当地ではこれが当たり前なんだとあきらめの境地になって待っていると、ようやく順番がまわってきました。窓口の女性に小包の段ボール箱を見せて船積書類を渡します。送り状のバーコードを読み取った後、こちらが持参した専用のビニール袋に送り状を入れて、箱に貼り付けろと指示されました。その上で、別の事務員にその箱を手渡したら、そのあとにレシートを渡すといわれました。

「え、どの人(どいつ)が次の作業をやるの?全然、秩序だった仕組みになっていない・・・・・・」

となりのカウンターのなかにいる女に「あんたか?」と尋ねると、「自分じゃない」という。もう1人、カウンターの外(つまりお客側)にいて、郵便を受け付ける機械のまえにいる者に「あんたか?」と尋ねました。すると、「自分はやりたくない」などと抜かすではありませんか!(だんだん言葉が悪くなってくる)。

「え、どういうこと?おまえしかいないやろ」と言いたい衝動をぐっと抑えます。

先ほどの窓口の女性に

「一体全体、どうしたらよいのか!」
とやや強い調子で言いました。
すると、窓口の女性からは、3番目の担当に
「ちゃんと荷物を受け取りな!」
との指示が飛びました。それでもってようやく受け取る気になったのか、3番目の女はのろのろとボクから箱を受け取りました。
カウンターのなかに入る仕切りのドアを開けて中に入ろうとしているので、ボクの荷物を持っていることもあり、こちらが親切に開けてあげます。それに対してお礼を言うでもなく、カウンターの中に入り、ほかの荷物が並んでいる床にボクの荷物を置きました。
そこで窓口に行って、ようやくさきほどの窓口女性からからレシートを受け取りました。

まあ、こんな感じで一連の手続きが終わりました。それにしてもだるい。こちらの書類をチェックするでもなく、荷物を計量するでもありません。ということは完全に申告した重量で郵送料が決まったということです。日本の郵便局はそれこそ10グラム単位で計っていますが、そんな緻密さや厳密さはかけらもない。アバウトなのです。
このように、英国の末端労働者のレベルは労働倫理という観点で相当低い。というよりは日本が高すぎるのであります。
とはいえ、日本へ荷物を実際に出して、また一日と滞在期間が短くなってきたことを実感しました。
 
(つづく)

 

風戸 俊城

ハイム在住。現役時代は中東、東南アジアの4か国に駐在し、40年勤務した後、現在は英国と日本を結ぶ知財プロモーターとして働く。経済・産業分野の翻訳業も手がける。

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