夏の星座～こと座

オルペウスの竪琴
オルペウスは、天才的な音楽家として、ギリシャ中でその名を知られていました。彼は、アポロンから授かった神の竪琴を奏で、その音色を耳にした全ての者を幸福にしました。

オルペウスは、美しい女性エウリュディケと結婚して幸せな日々を過ごしていました。しかし、ある日、エウリュリケが毒蛇に咬まれて死んでしまいます。彼はその死を受け入れられず、妻を取り戻すために決死の覚悟で、死者の国の冥界に入っていきました。

竪琴を奏でながら、オルペウスは冥界の奥底へと降りて行きました。冥界の凶暴な怪物たちはその音色に魅了され、彼を食い殺すことを忘れてしまいました。冷酷で厳格な冥界の王ハデスも心を動かされ、エウリュリケを地上に連れて帰ることを許しました。ただし、「冥界を出るまで、決して後ろを振り返ってはいけない」という条件を付けたのでした。

地上へ帰る途中、妻がついてきているかどうか不安になったオルペウスは、ふと後ろを振り返ってしまいます。そこにはたしかにエウリュリケはいましたが、次の瞬間、彼女は暗闇の中へと引き戻されていきました。

オルペウスは、哀しみと後悔に苛まれて死んでしまいます。その才能を惜しんだゼウスは、彼の竪琴を天に上げて「こと座」を作りました。