ブックレビュー「太郎の嫁の物語」三浦暁子著 ビジネス社刊
とてつもなく面白い本である。著者の三浦暁子氏は、知る人ぞ知る(いや、知っている方は多いと思う)、三浦朱門、曾野綾子ご夫妻の長男、三浦太郎さんの奥様だ。
繰り返して言う。とてつもなく面白い。ページを繰るのがもどかしいほど次のエピソードが知りたくなる。とにかく最近読んだ中でダントツに面白い。
三浦一族は作家、学者、新劇女優など、いわゆる芸術家タイプの人々の集まりのようだ。そこにサラリーマン家庭で育った暁子さんが飛び込んで、驚きと呆れの連続の物語が展開する。夫君の太郎さんをモデルにした「太郎物語」はNHKでドラマ化されたという。恥ずかしながら「太郎物語」は読んだことがなかった。「次郎物語」は子どもの頃読んだが・・・。このエッセイの題名が義母の作品を本歌取りして「太郎の嫁の物語」となっているのも洒落ている。
著者の観察眼は鋭い。身近なひとを、それも存命の場合はなおさら、描くのは至難だ。それをいともたやすく、適度な距離感を保って描き出している。そこはかとないユーモアを醸し出しながら、家族、親族の個性を浮き上がらせ、一方で著者の賢い人柄が確実に伝わってくる。一級のエッセイ。ぜひ一読をおすすめする。
AY