明るい弱虫ライターあつこ61のびくびく日記(50)老母とケンカ(遅すぎた反抗期)

 
毎週日曜日には、老人ホームにいる母に会いに行く。

果物とお漬物、ハーゲンダッツのアイスクリームを持って。食が細いので、少しでも食べてもらえるように。

母は95歳になる。
ほぼ寝たきり。
おむつの面倒が見られなくなって、4年前に老人ホームに入ってもらった。

8月だと言うのに
長袖のシャツとカーディガンを着込んでいる。
体重が30キロ台になってしまい、体が発熱しないのだろう。
加えて、ほぼ寝たきりだから運動による熱も出ない。

職員さんに頼んで車椅子に乗せてもらい、
散歩に出る。
私が来た時くらいしか、外に出られないからだ。

と、そこに急な雨。
仕方なくまた部屋に逆戻りする。
天候がくるくると変わって、困ってしまう。
ーーー

母の部屋の中には、たんすが3つある。
1つは、冬物。
もうひとつは、夏物。
あとのひとつは、タオルや下着などだ。

ほとんど着用していない夏ものを取り出して。

「家に持って帰ってしまっておくね」というと
母はいきなり怒り出した。

母「せっかく面会に来たのに、
話もせずに、荷物の整頓に来たの」

それは当たり前の意見だったけれども。

実は職員さんに「タンスの中身がぎゅうぎゅうなので整頓をしてほしい」と言われていた。
頼まれてから3ヶ月近く経ってしまい、早くやらなくてはと思っていたのだ。

あつこ「だって、きていないものをタンスに入れておいても仕方ないでしょ」

母「ひ孫(たっくん、まーくん)の話を聞きたかったのに、もういい。
会いにこないで」

その言葉で、面会は終わりとなった。
ーーー

母は、昔から極端なところがある。
0か100か。
右か左か。
中間というものがない。

子供の頃は
母の思いに沿った行動かどうか
母にとっていいか悪いかだけで評価される。

のんびりゆっくりと行動する方だったが、
母にとってさっさとできないのは悪だった。

早くできない私の代わりに、
レストランの料理のメニューさえ
母に決められる始末だった。
(あつこは、お子様ランチね)
ーーーー

結婚してからも
母に何かと評価をされた。
どうにか母に気に入られようと努力した。
理科系夫に
「なんでそんなにお母さんばかり気にしているの?」と言われたことがある。
小さい頃からそうだったので、当たり前すぎて、何を言われているかわからなかった。

自分の基準で判断していいんだ。
自分の気持ちに沿うことが1番なんだ。

そう心から思えるようになったのは、
つい最近、ここ2、3年なのである。
母が老人ホームに入った後だ。

弱虫で、自分に自信が持てないわたし。
いつも人の顔色をうかがってしまう。
母の育て方が原因の1つだと気がついたのも、
つい最近だ。
母から良い評価を得ることが
ずっと第一目標だった。

そうじゃなければ
おむつ替えを含めた母の面倒を
すべて1人でやる、なんてことはできなかった。
そして、うつ病の手前まで行ってしまった。

ーーー

還暦を過ぎたというのに
母の言葉ひとつひとつに
必要以上に反感を覚えるようになってしまった。
 
遅すぎた反抗期。

もしも、私が寝たきりに近い状態になったとして。
せっかくお見舞いに来た相手に即座に
「もう来ないで」と言えるだろうか。

たとえ理不尽な言葉を投げかけられた後だとしても。
言えない。

母に「もう来なくていい」と言われるのは
初めてではない。
何度もある。
実の娘なんだから、なにを言っても良いと言う気持ちが見え隠れする。

「子供が親の面倒を見るのは当たり前」
とも言われた。
悪気ではなくて、そういう時代に生まれ育った人なのだ。
95年間の人生、それなりに苦労も重ねている。
ーーー

現実問題として、
わたしは母を家に連れて帰ることができない。
わたしの心が壊れてしまうからだ。
たった1人でオムツの面倒はもうできない。

できるだけ、気持ちに沿ってあげよう。
そう思いつつも
母の小さな一言一言に
必要以上に反感を持ってしまうわたし。

母の日に送ったブラウスを
「気に入らないから」と、次の面会の時に返してくる(結局捨てた)

そうかと思うと、
「何も着るものがない」と愚痴をこぼす。

その気持ちに応えようと、
違うものを購入しても、気にいることは少ない。
元気な頃から、洋服や持ち物に関して好みがあって、うるさい人だった。

ーーーー
母、95歳。
あと10年以上生きるということはないだろう。

こうやって文章にしてみると、なんともやるせなく。 

なぜ柳に風と受け流して
楽しい時間を
おしゃべりで過ごさなかったのだろうと
後悔する。

毒親とは思わないが
60過ぎて、老母に反抗期のようなことをやっているわたし。

どこかに落としどころを見つけて
人生の最後、穏やかな時間を過ごさせてあげたい。

(自分の気持ちの整理のために、整頓しきれない内容のノートになったが。
そこはスルーしていただけると幸いだ)

 

つづく

編集者注:
明るい弱虫ライターあつこ61さんは、noteで毎日記事を更新中です。https://note.com/atsuko_writer55

 

著者紹介
あつこ(61)明るい弱虫ライター
●明るいのに小心者。びくびく。●日本証券業協会「お金について考えていること」入賞 ●定年「理科系夫」育て●朝日新聞リライフ「ビブリオバトル」優勝 ●関心のあること Apple Watch、睡眠分析、お墓探し、メルカリ、任天堂Switch、ポケモン、二世帯住宅、介護、孫保育、通信大学
●noteで毎日記事を更新中です。https://note.com/atsuko_writer55

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