まっちゃんのワクワク農業ライフ(その15)人生の楽土を歩む(3の3)

(編集者注)本年6月までお送りした「まっちゃんのワクワク農業ライフ」の集大成ともいうべき記事を、NPO法人スモールファーマーズのご好意により、転載させていただきます。今回は全3回の最終回をお送りします。

宮津での暮らし、人とつながり、人をつなぐ。

これまでと違う土地での暮らし、すぐ馴染めましたか?と伺うと「ここに来た頃、僕の畑作業を見ていたおばあさんがいてね、挨拶して少し話してるうちに、そのおばあさんが僕がやってることに興味をもってくれて、どんどん話ができた。おかげで地域の人につながっていくことができた。ありがたいよね」と松尾さんは言います。

「だからね、挨拶することは本当に大事。新しい土地で、自分の力だけで何でもできるわけじゃない。これから移住しようって思ってる人には、僕はちゃんと挨拶することを大事にしてほしい」

地域の人たちは、僕たちのことをちゃんと見てくれてる、と言う松尾さん。若い人のガムシャラなところも、コミュニケーションを通してちゃんと受け入れてもらえるし、喜んでもらえるのだと言います。

「ここは本当に良いところ。だから一人でも多くの人に宮津、日置に来てもらって農業をしてほしいって思ってる」
特に、松尾さん自身が学んだスモールファーマーズの人たちと一緒に農業をやりたいと思っているのだそう。
「海も本当にきれいで近い。海が好きな人はぜひ来てほしいなぁ!」

そんな松尾さんの声に応えた人がいます。
スモールファーマーズの卒業生、安藤さん。第二の人生を考え、候補地を巡っていたときに宮津の海と畑の美しさに惹かれ松尾さんに相談したところ、地域で信頼できる不動産屋さんを紹介していただいたそう。
今は宮津でマンションを借りての二拠点生活をスタートさせています。

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松尾さんと安藤さん。立ち話の話題はもちろん「農」

「地主さんにも繋いでもらえて、畑を借りることもできました。何と小屋付き!」と安藤さん。「その地主さんが新しいことが好きな人でね、綿マルチっていうのを田んぼで実験したりしてて、僕自身もまだまだ新しいことを知るチャンスになってる」

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綿マルチに覆われた地主さんの田んぼ

そんな安藤さん、暮らしのスタイルはまだまだ模索中だと言います。
「今は良いけど、80歳くらいになったらまた町に戻るかも知れないね。生活環境が高齢になったときにどうなんだろう…って。だから自分が動ける時間を過ごす場所をしっかり選んで楽しんでいきたいって思ってますよ」


新しい役割を担って、地域に何かを残したい。目の前に広がった新しい道。

宮津という土地で、自分自身を探求し続ける松尾さん。「でもね、実は今ちょっと虚しさを感じていて、自分の考える道を実践していくのは楽しいけど“それって自己満足でしょ?”っていう気がしてるんだよね」

宮津に惚れ込んでから約10年。「残りの人生を考えたときに、少しでも地域に何かを残したい、貢献していきたい」っていう気持ちが強くなっていってた」そんなとき、ある出会いがありました。

それが、オリーブ。

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「宮津も高齢化が進んで、耕作放棄地が増えてきてる。それで市が力を入れてやろうって言ってるのがオリーブ栽培。仲間40人ほどで、これまでに4,500本くらい植えたよ」
松尾さん自身も野菜、米、果樹に加えて、オリーブの栽培に取り組んでいます。
「最初、僕のところに来た話は自治会の副会長をやってくれないかっていう話だったんだけど、よくよく聞いていくとオリーブの話が出てきてさ、それを是非やらせてくれって言って、今は僕自身もオリーブを栽培しならがら、宮津オリーブ生産者の会っていうところで会計や商品開発をやってるよ」

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松尾さんのオリーブ畑。木の間隔も剪定も、探求に探求を重ねた賜物です

「元々は生産者が個々バラバラで動いてたんだけど、宮津オリーブ生産者の会を市が立ち上げてからは、組織として品質管理や販路開拓をしていこうって動いてる。僕のメインテーマは販路開拓だね」そう話す松尾さん、実は会社員時代は第一線で働く商社マン。

「商品開発もまだまだこれから。今は収穫量の3分の2はオイルに、3分の1は茶葉とかクッキー、それに新漬。あとは障害事業所の人たちがビスコッティをつくったりね。
でもまだまだ採算ラインには乗ってないね。今は4,500本だけど、採算ラインに乗せようと思ったら数万の木が必要。まだ道半ばだよ」と経験豊富な商社マンの顔を覗かせます。

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オリーブの葉でつくったオリーブ茶。さわやかな口当たり

「今の栽培の担い手は、高齢の人が多い。万単位の木を植えたとしても、その先で誰が栽培を引き継いでいくのかっていうことが課題。若い人たちの誘致も育成もとっても大事だからね。僕はイタリアまで栽培研修に行って、イタリアと日本の土の違いも見てきた。剪定のやり方も、ちゃんと日本の風土にあったやり方があるんだ。そういうことを僕は若い人たちにしっかり伝えていきたいって思ってる」

熱い思い、若者たちに届きそうですか?と聞くと「今は、地域おこし協力隊で来てくれた人たちにも教えて、託していってるよ。でもみんな生活や人生があるからね。僕たちの都合じゃなくて、相手のペースにあわせながらじっくりじっくりやってるよ」

飽くなき探求心と人を思う気持ち、人生を楽しむ心。自分の変化を楽しみ、人とのつながりを尊ぶ松尾さんは、宮津での暮らしを「楽園」と言います。
そんな宮津の暮らしを伝えるために、最後にメッセージをいただけますか?とお願いすると、真っ先にこの言葉が飛び出しました。

「宮津で一緒にオリーブ栽培やりましょう!」

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レポートする人
今井幸世さん

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2021年の夏から野菜づくりの勉強を始める。はじめての土、はじめての野菜、これまで想像もしなかったたくさんの経験と自然のふしぎを通じて、環境と状況の中にある自分を発見。自然の摂理に沿って生き、はたらき、出会い、食べる暮らしを目指し自給農に挑戦中。

終わり

(編集者注)NPO法人スモールファーマーズのご案内他については次をご参照下さい。

1)スモールファーマーズの案内    https://note.com/small_farmers
2)スモールファーマーズのサポートメンバーの案内   https://note.com/small_farmers/n/nf5ec19348d96
3)スモールファーマーズのライン友だちの案内    https://lin.ee/6SnMMMF

著者紹介
松尾 吉高 
京都府宮津市在住。1953年京都生まれ。商社在職中に海外はサウジアラビア、イラン、マレーシア、上海などに勤務。62歳でリタイアし、本格的に農業に取り組む。趣味 ゴルフ、スキー、釣り、旅行、歴史の勉強。マイブームは歩き四国お遍路。現在オリーブ栽培で地域おこしに取り組み中。

                           

 

 

 

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