冬の星座~ぎょしゃ(馭者)座

ぎょしゃ座は晩冬、天頂近くの北の空に見える、比較的大きな星座である。星座の形はやや細長い五角形の胴体にロボットのマニュピレーターのような小さな腕がついている。ただし、胴体の左下の星、γ制エルナトは現在ではおうし座のβ星とされておりぎょしゃ座のɤ星は欠番とんっている。

ぎょしゃ座のα星カペラは全天の中では最も北極に近い1等星である。真夏を覗けばほとんど一年中北の空にその姿を見ることが出来るので、古代バビロニアでは「ディルガン」または「イク」と呼び、最高神マルドゥクの星として崇拝していた。インドでも同じく最高神として「ブラフマーの腕」と呼んだ。アラビアでは「星の長」と呼び、また、カペラの側にあるおうし座のプレアデス星団をラクダの群れとみてそれを率いるラクダ使いと呼ぶこともあった。

また、左ひじにあたる二つの星ζ性ホエドゥス・プリムス、η星ホエドゥス。セクンドゥスは古代ギリシャでは小山羊座として独立した星座名を与えられていた。現在でもラテン語の辞書の中には、ハエディ(ホエドゥスの複数形)を小山羊座と記載するものがある。

星図では、ぎょしゃ座は小鹿(羊、山羊もある)を抱いた、もしくは鞭を持った男の絵として描かれている。ぎょしゃ座のぎょしゃ(馭者)は荷馬車などを運転する他人ではなく、古代の四輪戦車を駆る戦士のことである。

蛇王エリクトニオス

鍛冶の神ヘパイストス女神の中でも最も美しいと言われる美神アフロディテを妻としていたが、多くの愛を司るアフロディテもまた気が多く、なかば公然と軍神アレスと浮気していたのでヘパイストスは欲求不満気味であった。そんなある時、戦女神アテナがヘパイストスに武器の製造を頼みにやって来た。

アテナは猛々しい戦神ではあるが、その一方で凛々しい美しさを持ち合わせていた。そんな姿を見てヘパイストスは欲情を爆発させアテナを追いかけた。驚いたアテナは逃げ出したが、ヘパイストスは驚くべき素早さで追いすがり、大地に組み敷いた。しかし激しい抵抗にあい、思いを遂げることは出来なかった。

その際、ヘパイストスの放った精がアテナの身体にかかった。アテナが羊毛でふき取り地面に落とすとそこから一人の赤子が生まれた。アテナはその子をエリクトニオスと名付け、箱に入れてアテナイの初代王ケクロプスに「決して中を見てはいけない」と言って預けた。箱はケクロプスの娘、アグラウロス、ヘルセ、パンドロスの手によって大切にしまい込まれた。

やがて娘たちはどうしても箱の中を見たいという誘惑に駆られるようになった。そしてある日、娘たちは誘惑に負けてとうとう箱の中を覗いてしまったのである。中を見た娘たちは氷りついた。箱の中にいたのは赤子にからみつく一匹の大蛇だった。その姿の恐ろしさに娘たちは気がふれてしまい、アクロポリスの崖から次々と身を投げ死んでしまった。

その後、エルクトニオスはすくすくと成長し、やがてアテナイ三代目の王アンピクテュオンを追放し四代目の王となった。しかし、エリクトニオスは生まれつき足が不自由だったので馬に曳くかせる戦車(チャリオット)を発明し王として勇敢に振舞ったという。ほかにも、アクロポリスにアテナ像を建てたり、アテナを祀るパンアテナイア祭を開催したりと女神アテナに尽くしたので、死後は天上に上ることを許されぎょしゃ座となったのである。因みにこの話には蛇がよく登場するが、蛇は女神アテナの遣いであり大地の女神のシンボルでもある。

星座名 ぎょしゃ座
学 名 Auriga
主 星

カペラ(0.1等級)
メンカリナン(1.9等級)

季 節 冬の星座(20時正中 2月中旬)

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