冬の星座~おおいぬ座

おおいぬ座は真冬、南東の空に見られる星座である。星座の形はα性シリウスを口とした三角形の頭部に鼓型の胴体を持ち、尾と4本の足が今にも歩きだすような格好で並んでいる。非常にうまく犬の姿を現しており、星の並びkら犬の姿を思い浮かべるのは容易である。

おおいぬ座は太陽を覗いて全天で最も明るい恒星・シリウスを主星に持つことで有名だ。標準的な1等星の13倍もの明るさを持つシリウスは、時としておおいぬ座そのものよりも重要視された。

古代エジプトでは、夏至(古代エジプトでは元旦)のころ、夜明けの直前にシリウスが昇るのを見てナイル川が増水する時期を知った。このことからシリウスを「ソティス(水の上の星)」と呼び、肥沃な土と恵みをもたらすものとして崇拝された。また、エジプトの冥府の神である犬頭の神アヌビスとされることもあり、ナイル川の増水によるの被害を警告する役目を持っていた。さらに、元旦の夜明けに昇る星であることから、愛と生命の象徴として女神イシスととみることもあった。

中国ではシリウスを、その輝きから狼の目を連想して「天狼星」と呼んだ。また、β性ミルザムを「野鶏」と呼び天狼はその星を狙っているとされた。

英語圏では、シリウスを「Dog Star」、7月中旬から8月中旬の非常に暑い時期を「Dog Days」ということがあるが、これはシリウスが太陽と共に昇る時期をさしている.ローマ時代のギリシャでも、ほぼ同じ時期のことを「犬の日」といい、草木が炎暑によって枯れるのは太陽とシリウスが引き起こしていると信じられていた。そして厄払いのため赤犬を生贄に捧げたと言われる。

神話では、おおいぬ座は、狩人オリオンが連れていた猟犬とする説がもっとも有名であるが、ここではもうひとつの神話を紹介しよう。

疑うケパロス
ケパロスはポーキス王デーイオーンの息子でとても美しい青年だった。ケパロスの妻プロクリスも素晴らしく美しい女性で二人はとても愛し合っていた。ところが、ケパロスの美しさに横恋慕した女神がいた。曙の女神エーオースである。エーオースは嫌がるケパロスを無理やりさらって恋人としたが、ケパロスがいつまでも妻のことを口にするので、とうとう諦めて故郷に返すことにした。

しかし、ケパロスを帰す際、ふといたずら心を覚えて「プロクリスはあんなに美しいのだから、おまえのいない間に浮気しているに違いない」と言った。妻の美しさを誰よりもよく知っているケパロスは、エーオースの言葉に大いに不安を掻き立てられた。そこで、ケパロスは、妻が心変わりしていないかどうかを確かめるために、エーオースの力を借りて別の男に姿を変えると旅人を装ってプロクリスのもとを訪ねた。

ケパロスは言葉巧みにプロクリスを誘惑し、金銀財宝の贈り物を見せた。はじめは夫に操をたてていたプロクリスではあったが、男の執拗な口説きについに折れ、体を許すことを受け入れてしまった。するとケパロスは正体を現し妻の不貞を大いに詰った。プロクリスは恥ずかしさと怒りでそのまま家を飛び出してしまった。

ライラプスと狐
プロクリスはその後、クレタ島に辿り着きミノス王の愛人となった。ミノス王はプロクリスに、狙った獲物を必ず捕らえる猟犬ライラプスと狙ったものを必ず射止める槍を贈った。だが、プロクリスは、ミノス王の妻パシパエの嫉妬を恐れ、王と別れクレタ島を離れた。そしてケパロスと再会し、和解の印にライプスと槍を渡した。

ケパロスはライラプスを連れ槍を持って国中を荒らしている狐を退治に出かけた。しかし狐のあまりのすばしこさにライプラスの足でもなかなか追いつくことができない。業を煮やしたケパロスが槍を投げつけようとした時、この素晴らしい狐と犬が傷つくことを恐れた大神ゼウスがライラプスを天に上げおおいぬ座にした。(決して捉えられない狐と獲物を必ず捕らえる猟犬の追いかけっこという矛盾に答えを出すため、ゼウスが両者を石にすることで決着させたとする説もある。)

悲劇のプロクリス
その後、ケパロスとプロクリスは暫く平穏に暮らしていた。ある日、ケパロスは狩りをした後、汗をかいた身体を冷やそうと「アウラ(微風)よ、わが胸の火照りを鎮めておくれ」と口にした。これを耳にしたプロクリスは、アウラを女性の名前と勘違いし、折角取り戻した夫を他の女に横取りされるのではと心配して、狩りに出かけるケパロスの後をつけた。

ケパロスは、藪の中に隠れて様子を伺っていたプロクリスを、獲物と間違えて槍を投げつけ殺してしまった。過ちに気づいて駆けつけた夫に、プロクリスは「どうか、アウラという女性を私の代わりにはしないでほしい」と言い残したという。ケパロスはこの後、妻を殺した罪により終身追放を言い渡された。行き違いからとはいえ、人の心の弱さが引き起こした悲劇である。

星座名 おおいぬ座

 

 

学 名 Canis Major
主 星

シリウス(1等級)冬の大三角のひとつ
全天で最も明るい1等星

季 節

冬の星座(20時南中 2月下旬)

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