パレスチナ問題とは(1)~新語・難語

毎日ニュースとなっているハマス、パレスチナ、イスラエルについて、歴史的な背景を捉えてみたいと思います。

本日はその第1回です。

第二次世界大戦後、パレスチナにおけるイスラエルの建国に伴い、アラブ人とユダヤ人の間で深刻な対立が生じ、1970年代初頭までにアラブ側はエジプトを盟主とし、イスラエルとの4回にわたる中東戦争を繰り広げました。

現在、中東とイスラム世界において、国際的な不安定要因として特に注目されているのは、パレスチナ問題とイラン・イラクの関係です。これらの問題には宗教的対立、民族対立に加えて、冷戦期の米ソ二大国の介入や、冷戦終結後のアメリカの大国としての影響が絡んでいます。ここでは主にパレスチナ問題に焦点を当て、その歴史的経緯をまとめます。

パレスチナ問題の起源

ユダヤ人とアラブ人は宗教的にも対立しますが、元々はセム系民族であり、一神教を共有する共通点がありました。イスラム教ではユダヤ教を「啓典の民」として認めており、共存が可能であったはずです。

しかし、19世紀末にユダヤ人のパレスチナへの帰還を推進するシオニズム運動が始まり、第一次世界大戦中にイギリスの外交政策が介入し、パレスチナはイギリスの委任統治下に入りました。この時期にユダヤ人の移住が増加し、アラブ人との対立が激化しました。イギリスはアラブ人とユダヤ人の権益を同時に保障するために二枚舌の外交政策を採りましたが、対立は解消されず、国際連合に問題の解決を委ねることとなりました。

中東戦争の展開

第一次中東戦争(1948年)では、国連のパレスチナ分割案に基づき、イスラエルが建国されました。しかし、アラブ連盟は不満を抱き、パレスチナ戦争が勃発。イスラエルが勝利し、アラブ系住民は難民として近隣諸国に逃れました。この出来事はアラブ諸国の脆弱性を浮き彫りにし、エジプトで自由将校団による王政打倒のエジプト革命(1952年)など、アラブ世界に大きな変革をもたらしました。

第二次中東戦争(1956年)はエジプトのスエズ運河国有化をきっかけに勃発し、イギリス・フランスがイスラエルと共にエジプトを攻撃しました。しかし、国際世論の反発により撤退し、エジプトのスエズ運河国有化を認める結果となりました。

第三次中東戦争(1967年)では、パレスチナ解放機構(PLO)がイスラエルを敵視し、戦闘が再燃。イスラエルは6日戦争として知られる短期間に大きな領土を占拠しました。

第四次中東戦争(1973年)では、エジプトのサダト大統領が奇襲攻撃を成功させましたが、アラブ諸国は石油戦略を駆使し、有利な休戦をもたらしました。しかし、ガザ地区やヨルダン川西岸にはイスラエル人の入植が進み、撤退は認められませんでした。

1970年代:PLOの活動と和平への道

1970年代、中東問題はエジプトを中心にしたアラブ諸国とイスラエルの対立が収束し、パレスチナ解放機構(PLO)のゲリラ闘争が主役となりました。70年代前半にはテロ活動が活発化しましたが、後半には「二国家共存」路線の模索が始まりました。

PLOはパレスチナの解放と難民の帰還を目指すため、反イスラエル闘争の中心勢力として活動しました。アラファトが議長に就任し、テロ活動を指導しましたが、国際世論の変化とともにイスラエルは自衛力を高め、第四次中東戦争(1973年)ではアラブ諸国の石油戦略により停戦に持ち込まれました。

PLOが本拠をレバノンに移し、レバノン内戦が勃発。内戦は泥沼化し、シリアが介入し、PLOは苦境に立たされました。

エンテベ空港事件とエジプト・イスラエルの和平

1970年代には、パレスチナ解放を掲げるテロリストによるハイジャック事件が多発しました。その中で、1976年のエンテベ空港事件では、イスラエルが特殊部隊を派遣して人質救出に成功し、国際的な注目を浴びました。

一方、エジプトのサダト大統領は大胆な転換を図り、1977年にイスラエルを訪問し、1978年にはアメリカの仲介でイスラエルとの和平に合意し、1979年にエジプト・イスラエル和平条約を締結しました。しかし、この和平はPLOや他のアラブ諸国に強い反発を招き、エジプトはアラブ世界で孤立し、対イスラエルのアラブの足並みは大きく乱れました。

パレスチナ問題は長年にわたり、宗教的、民族的な要因に加え、国際政治の複雑な影響も受けつつ、未解決のまま続いています。中東の平和と安定を実現するためには、引き続き多くの困難が克服される必要があります。

(つづく)

参考文献:世界史の窓(ウェブサイト)

 

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